交通事故では首をケガする確率が最も高いです。とくに頚椎捻挫(むち打ち)が多いですが、頚椎ヘルニアを発症することもあります。

もし交通事故が原因でヘルニアを発症した場合、後遺障害として認定される可能性があります。ただ、自覚症状だけでのむち打ちなのか、ヘルニアなのかを見極めることは難しいです。

頚椎ヘルニアかどうかを正確に判断するには、適切な検査をしなくてはなりません。また、医師に対する症状の訴え方や検査の時期も、後遺障害認定においては重要な要素となります。

そこで、交通事故のあと首に痛みが出てヘルニアの可能性が出てきた場合の対応方法を詳しく解説していきます。

頚椎椎間板ヘルニアの症状

首の骨は7個の骨が重なって構成され、骨と骨の間の部分にクッションの役割を果たす「椎間板」というゼリー状の組織があります。この椎間板が外に飛び出ることで神経組織を刺激してしまい、さまざまな症状を引き起こす原因になります。

頚椎ヘルニアの具体的な症状は下記のようなものがあります。

  • 首・肩の痛み
  • 手にかけてのシビレ
  • 腕全体のだるさ
  • 握力低下
  • めまい・耳鳴り

このような症状がある場合は頚椎ヘルニアの可能性があります。特に、腕から手にかけてシビレが出た場合、頚椎ヘルニアの可能性を疑った方がいいです。

首は可動範囲が広いため、それだけ頚椎への負担が大きくなります。交通事故では、あらゆる状況で首に対して衝撃を受けやすいので、椎間板への圧力がかかりやすいです。

頚椎ヘルニアの症状が悪化してしまうと、排尿障害や手の感覚症状が残るリスクもあります。そのため上記の症状が一つでも当てはまれば、通院先の医師に対して必ず訴えるようにしましょう。

頚椎ヘルニアの治療期間について

頚椎ヘルニアになった場合、症状のレベルによって治療期間は大きく変わります。軽症であった場合、3ヶ月前後で症状が落ちつくこともあります。重症化すると手術をしても首の痛みや手のシビレは完全に治らずに、後遺症が残ることもあるほどです。

ただ、日常生活に支障が出るほどの状態になるのは珍しく、「疲労が溜まってくると痛みやシビレが悪化する」という症状が大多数になります。

交通事故から3ヶ月以上経過してもヘルニアの症状に改善が見られない場合、軽症ではありません。6ヶ月前後で症状が完治ではなくても、若干落ち着いてくるような状態であれば徐々に回復している目安になります。

もし事故から6ヶ月前後の時点で頚椎ヘルニアの症状にあまり変化がない場合、症状を回復させるのに数年単位で考える必要があります。

また、仕事でデスクワークなどをしていて常に首に負担がかかる習慣がある場合、頚椎ヘルニアの回復は遅いです。「完治」と言えるような状態に持っていける可能性は低くなることを知っておきましょう。

ヘルニア持ちの人が事故に遭った場合

「ヘルニア」と聞くとかなり重症なイメージがあると思いますが、実は頚椎ヘルニアは珍しい症状ではありません。頚椎ヘルニアは加齢によって発症しやすくなりますし、普段からデスクワークをするなど首への負担が大きい人も発症しやすいです。

そのため、もともとヘルニア持ちの人が事故に遭った場合、交通事故によって発症したといえるかが問題になります。

結論をいいますと、「交通事故で発症した頚椎ヘルニア」だと主張すべきです。もし、「前から首が痛くてヘルニアがあった」と病院や保険会社に伝えてしまうと、「今回の事故で首を痛めていない」と判断されてしまいます。

これでは首に後遺障害が残ったとしても、等級認定される可能性はなくなります。さらに、事故によって負傷した部位が少なく扱われるので、保険会社から軽症だと判断されて短期間で治療を打ち切られるリスクも高まります。

ただ、交通事故の前に頚椎ヘルニアの手術歴があるなど、ヘルニアの症状が重かった診断歴がある場合は注意が必要です。

もし、過去に頚椎ヘルニアの診断歴があった場合、慰謝料を減額される可能性があります。ただ、かなり重症な頚椎ヘルニアでなければ、まず慰謝料に影響はないと考えて大丈夫です。

いずれにしても、交通事故の前からヘルニア持ちであっても気にせず「事故で悪化したヘルニア」だと主張しましょう。

追突事故でヘルニアが悪化するケースは多い

交通事故のなかでも、追突事故というのはかなり発生件数が多いです。追突事故の被害を受けた場合、後ろからの衝撃によって勢いよくアゴが上に跳ね上がります。

その瞬間は頚椎に対してかなりの負荷がかかるため、椎間板が外に出やすくなります。バイク事故などのように直接身体に衝撃を受けていない事故であっても、頚椎ヘルニアを発症することはよくあります。

特に「高速道路で追突された」「ノーブレーキで追突された」という場合、スピードがかなり出ている可能性が高いので、首の痛みが強ければ必ず精密検査をすべきです。

頚椎ヘルニアの検査方法

交通事故のあと首に強い痛みが出た場合もちろんですが、手にかけてシビレなどの神経症状が出た場合は頚椎ヘルニアがあるか検査をすべきです。その際、レントゲン写真だけでは不十分です。

レントゲンは基本的に骨に異常があるかどうかを調べるのに適していますが、ヘルニアを見つけるのに向いていません。骨の状態をチェックするのは大切ですが、筋肉や神経なども含めて検査をする必要があります。

そこで、どのような検査をして頚椎ヘルニアを調べるのかを以下で解説していきます。

MRI検査は絶対に必要

頚椎ヘルニアがあるかどうかを精密に検査するにはMRIが最も適しています。MRI検査では骨だけでなく神経組織が鮮明に映るため、細かい部分まで画像で把握できます。

上記の写真は首の椎間板と神経の画像です。この画像は少ししか神経を圧迫していませんが、圧迫の度合いが強くなるとシビレや痛みが悪化しやすくなります。

もし、医師がMRI検査を提案してこなかった場合は「後遺障害の申請時に必要な書類になる可能性があるからMRI検査をしたい」という意向を伝えましょう。

ジャクソンテストの方法

なお、MRI検査以外にも神経症状を検査する方法があります。ただ、MRI検査のように画像で明確に解析できるものではないので、陽性の場合は「頚椎ヘルニアの可能性がある」という、おおまかな目安を調べるものです。

まず、首の神経症状を調べる方法として「ジャクソンテスト」というものがあります。流れとしては以下のようになります。

  1. 座った状態で上を向く
  2. 術者が額を下に押し込む

このとき首から腕にかけて痛みが強くなったり、手にかけてシビレが悪化したりした場合は陽性反応となります。その反面、額を下に押し込んでも症状に変化がない場合は神経症状がない可能性が高くなります。

もし、ジャクソンテストで陽性だったとしても必ず神経症状がるとは限らないので、陽性反応が出た場合は必ずMRI検査をしておきましょう。

スパーリングテスト

ジャクソンテストに近い検査方法としてスパーリングテストがあります。スパーリングテストの場合は首を真上ではなく、左右に倒して行うという違いがあります。

流れとしては以下になります。

  1. 座った状態で上を向く
  2. 術者が左右に頭を倒した状態で下に押し込む

ジャクソンテストと同じく、首を下に押されたときに痛みやシビレが出た場合は陽性となります。また、左右それぞれで下に押し込まれたときの感覚が違う場合があります。

もし「左に首を倒して押された方がシビレが悪化した」「右に首を倒して押されたとき、右の首から肩にかけて痛みが強くなった」という症状が出た場合は細かく医師に伝えましょう。

頚椎捻挫の診断でもヘルニアが見つかれば後遺障害認定の可能性がある

交通事故で首を痛めた場合、ほとんどの場合は「頚椎捻挫」と診断されます。まれに「外傷性頚部症候群」と診断されることもありますが、頚部捻挫も外傷性頚部症候群も「むち打ち」だと思っていいです。

ただ、診断名が頚椎捻挫でもヘルニアの症状があることはよくあります。その場合、症状のレベルによっては後遺障害認定される可能性が出てきます。

このとき、頚椎ヘルニアは事故前から発症していたのかどうかが問題になります。実際、交通事故に関係なく頚椎ヘルニアを発症している人も多いので、交通事故が原因で発症した頚椎ヘルニアでなければ後遺障害認定されることはありません。

そこで重要になるのは医師の診断です。例えば、MRIの画像でヘルニアが明確に把握できた場合は「これは事故によって発症したヘルニア」だと診断してくれることで、後遺障害認定の確率は高まります。

一方で「これはもともと存在していたヘルニアの可能性が高い」という診断を受けてしまうと、後遺障害認定の可能性は極めて低いです。

専門医がMRI画像を見れば発生してすぐのヘルニアなのか、かなり前から発症していたヘルニアなのかをある程度見極めることができます。

そのため、頚椎ヘルニアがどの時期から発症していたのかという医師の判断によって、後遺障害認定の確率が変わります。

頚椎ヘルニアで後遺障害認定を受けるまでの流れ

後遺障害の申請をする場合は医師から症状固定という、「将来的に首の痛みや手のシビレが回復する見込みがない」と診断されたあとに進めていきます。

症状固定の診断を受けた場合は「後遺障害診断書」というものを医師から作成してもらう必要があります。後遺障害診断書に残った症状を細かく記載してもらい、MRI検査の画像などがあれば、それと一緒に自賠責保険調査事務所へ提出します。

審査が終わると後遺障害として「認定された場合」「非該当とされた場合」ともに書面で通知がきます。そこに、どういった過程で審査をしたのかが記載されています。

首のヘルニアで獲得できる後遺障害等級は14か12級のどちらかになる

後遺障害は1〜14級に細かく分類され、それぞれの等級に決められた症状に該当する場合のみ認定されます。交通事故が原因で発症した頚椎ヘルニアで獲得できる後遺障害等級は、14級か12級のどちらかとなります。

後遺障害14級は「局部に神経症状を残すもの」、12級は「局部に頑固な神経症状を残すもの」という基準があります。要は、両者とも首から手にかけてつながる神経を痛めてシビレが残った状態です。なお、後遺障害14級と12級の違いは神経症状の度合いになります。

頚椎ヘルニアで後遺障害12級として認定される確率は非常に低く、MRI画像で神経をひどく圧迫しているものが明確であることが必須条件になります。

なかには実際に頚椎ヘルニアを発症している画像があったとしても、後遺障害14級にも認定されずに非該当とされるケースも多いほどです。

このようなことから、頚椎ヘルニアがあったとしても後遺障害の認定率が高いというわけではありません。頚椎ヘルニアで後遺障害申請をする場合、12級は難しいから14級を狙うのが圧倒的に多いです。

かなり重症な頚椎ヘルニアでなければ後遺障害12級として認定されないため、確率が極端に低いことを知っておきましょう。

後遺障害14級・12級の認定を受けるには通院実績も重要

頚椎ヘルニアで後遺障害認定を受けるには、治療日数などを含めた通院実績も審査されます。例えば、「腕の骨を骨折して変形が残った」という場合は画像で明確に症状を立証できるため、治療日数は審査にあまり関係ありません。

ただ、頚椎ヘルニアの場合はMRI画像で神経症状を立証できても、治療の頻度や期間が少ないと「そこまで治療が必要のないレベル」と判断されてしまう可能性があります。

もし頚椎ヘルニアで後遺障害認定を狙う場合、月に10日以上の治療頻度と6ヶ月以上の通院実績が認定にとって重要です。このとき、病院での治療をメインにした方が後遺障害認定の確率が高まります。

整骨院では治療ではなく施術という扱いになるため、整骨院へいくら通院しても後遺障害審査で有利にはなりません。あくまで確率の問題になるため、整骨院に行くと後遺障害認定されないわけではないです。

中には、「月に1〜2回しか病院に行かず、あとは週に3日ほど整骨院へ通院」というケースでも、後遺障害14級として認定されることもあります。しかし、まったく病院に通わないと認定される確率はほぼなくなります。

このようなことから「整骨院への通院がいい」と考える人は、少ない日数でも一定頻度で病院への通院もしておきましょう。

頚椎ヘルニアが悪化して後遺障害認定されたときの慰謝料

後遺障害として認定されると、慰謝料は高額なものになります。例えば、後遺障害14級の慰謝料は110万円になり、12級は290万円になります(弁護士が示談交渉をした場合)。ちなみに、後遺障害申請をして非該当とされた場合、後遺障害慰謝料はゼロです。

そのため、後遺障害申請は被害者にとって非常に重要な補償になります。後遺障害申請は綿密な準備が必要になるため、「首の痛みが治らなかったら後遺障害申請を検討しよう」という認識では遅すぎます。

後遺障害申請を視野に入れた通院頻度やMRI検査の時期など、準備すべき点はたくさんあります。治療の途中段階から適切な対応を取ることで、後遺障害として認定される確率を高めることができます。

交通事故のあと、少しでも首に違和感を覚えたら慰謝料をもらうために動くようにしましょう。

交通事故で首の痛みが強ければ後遺障害申請を視野に入れるべき

交通事故で頚椎ヘルニアを発症することは多いです。ただ、頚椎ヘルニアで後遺障害認定を受けるのは簡単ではありません。いくら症状が重くても、適切な準備をしなければ後遺障害認定される確率は低くなります。

もし首の痛みや手のシビレが強ければ、事故から早い段階でMRI検査をしておく必要があります。その結果、神経症状が明確に見つかった場合は後遺障害認定される可能性が高くなります。

その際は毎月一定の通院頻度を保ち、6ヶ月以上の治療実績を作りましょう。さらに、事故後から明らかに症状が重くなったことを医師に伝え、「交通事故によって悪化したヘルニア」だという診断を受けることが重要です。これにより、後遺障害認定を受ける確率を高めることができます。

後遺障害申請をすることにリスクは全くありません。そのため頚椎ヘルニアが発覚した場合、通院を継続している段階から後遺障害認定の確率を高める準備を進めておきましょう。