交通事故によるケガが完治しなかった場合、「後遺障害」として認定される可能性があります。

このとき、治らなかったケガが無条件で後遺障害として扱われるということではありません。1〜14級に分類された等級に該当し、それを損害保険料算出機構(自賠責調査事務所)という機関が認定して初めて後遺障害として扱われます。

また、交通事故で複数の部位を負傷して、それぞれの部位で後遺障害認定を受けた場合は「併合認定」という扱いになります。

併合については非常に複雑な知識になるため、正しく理解しなければいけません。そこで今回は、後遺障害で併合認定された場合の補償内容について解説していきます。

併合認定の基本原則

後遺障害の等級に該当する症状が複数ある場合、以下のような扱いを受けます。

  • 13級以上の後遺障害が2つ以上→重い方の等級を1つ繰り上げる
  • 8級以上の後遺障害が2つ以上→重い方の等級を2つ繰り上げる
  • 5級以上の後遺障害が2つ以上→重い方の等級を3つ繰り上げる

例えば、13級と12級に該当する症状がある場合、重い等級の12級を一つ繰り上げて11で認定されます。他にも5級と4級に該当する症状であれば、重い方の4級を3つ繰り上げるので1級扱いとなります。

ちなみに後遺障害の併合認定がなされると、以下のような通知が届きます。

また、基本的に後遺障害の併合認定は13級以上の等級のみに適用されます。そのため「14級とそれより重い後遺障害」の2つがあったとしても、等級が繰り上がることはありません。

例えば、後遺障害14級と12級に該当する症状で認定されたとします。この場合、繰上げがないためそのまま上位等級である12級の後遺障害認定となります。

併合が3つある場合

後遺障害に該当する症状が3つ以上ある場合、より重症な等級に繰り上げされると考える人もいるかと思います。

しかし、併合認定の基準は後遺障害に該当する症状が「2つ以上」とされているため、3部位以上で後遺障害が認められても繰り上がりの基準は同じです。そのため、併合が3つであっても意味はありません。

後遺障害14級に該当する症状が2つある場合

先ほど記した通り、基本的に後遺障害の併合認定は13級以上の等級のみに適用されます。14級に該当する後遺障害が2つあったとしても14級のままという扱いになります。

そのため、14級に該当する症状が2つであっても慰謝料は同じです。ただ、場合によっては通常の14級よりも補償額が増える可能性もあります。

裁判所による判例では、併合14級の場合(14級が2つのケース)に通常よりも高い慰謝料や逸失利益が認められていることがあります。具体的には、ケガの状況によって労働力が大きく低下したことを立証することができれば、通常の14級よりも高額な補償額になる可能性があります。

例えば、「首と腰の両方に症状が残ったことで、より労働能力の低下が認められた」「未成年のときに顔面に大きな傷跡が残ったことで、より精神的苦痛が大きいと判断された」などです。

このように、14級から上位の等級に繰り上がることがなくても、状況によっては最終的に受け取る補償額が通常よりも増えることもあります。

たとえ後遺障害14級であっても、認定されたケガが2つ以上あるときは必ず専門家に相談をして、補償額が増える余地があるかどうかを聞くべきです。

同一部位に後遺障害が残った場合は系列によって併合認定の基準が変わる

なお、後遺障害の併合認定をされる基準のなかに「系列を異にするもの」というものがあります。「系列」とは、ケガの系統が近いかどうかで判断するというものです。

例えば、まぶたの一部が欠けてしまい、それに伴いまぶたの運動障害が残った場合は「同系列」であると判断されるため併合認定はされません。要は、「別々の後遺障害とはみなされない」ということです。

後遺障害に該当する症状が2つあったとしても、その症状が同じ部位であった場合は併合認定されないことが多くあります。

後遺障害の審査時は「系列を異にするもの」という基準があるため、違った系列で後遺障害に該当する症状が2つ以上あれば併合認定されます。

例えば、大腿骨の骨折により変形を残し、さらに太ももに大きな傷跡が残った状態(醜状障害)であれば併合認定される可能性があります。これは同じ足のケガであっても、骨折と傷跡は別々の後遺障害だとみなされるからです。

このように、同じ部位のケガであっても、後遺障害の状態によって併合認定される場合とされない場合があることを知っておきましょう。

併合認定されない場合や組み合わせ等級

ただ、例外もあります。系列が異なっていても、併合とならないことがあるのです。

例えば、大腿骨を骨折して変形が残り、その影響で1㎝短縮したままになった場合です。この例では、変形が認められると後遺障害12級8号、1㎝の短縮が認められると13級8号に該当する症状になります。

片足の「変形障害」「短縮障害」は、併合認定の条件を満たすように感じます。しかし、この例では併合認定は認められず、13級と12級で比較して上位等級である12級で後遺障害認定されることになります。

理由として、大腿骨が変形した結果として短縮しているという「1つの後遺障害に対して、2つの系列で判断している」と扱われるからです。そのため、同じ部位のケガで併合認定されるためには、独立した2つの観点から後遺障害を証明できる場合に限られます。

・組み合わせ等級も併合されない

後遺障害の併合認定される基準に「系列を異にするもの」とありますが、系列が異なっていても併合されない場合はあります。

例えば、両足の指を全て失った場合、左右の足それぞれで後遺障害認定されると併合認定の基準を満たすように見えます。

ただ、後遺障害5級に「両足の足指を全て失ったもの」という両足のケガを組み合わせた基準があります。このように、各等級に2つの後遺障害を組み合わせた項目がある場合、併合認定されずに組みわせ等級が優先されます。

併合によって序列が乱れる特殊事例の場合

なお、後遺障害の等級は1〜14級に分類されています。その中で、同じ部位のケガでも重症度が高くなるにつれて徐々に等級が高くなるものもあります。

例えば、上肢の後遺障害であれば、下記の図のように重症度のレベルに応じて細かく分類されています。これを「序列」と読んでいます。

このとき、同じ序列に分類されている後遺障害が複数あるときは注意が必要です。系列の違うケガが2つあったとしても、序列が乱れることによって通常とは違う判断をされることもあります。

例えば上肢(肩から腕の先)であれば、以下のようになっています。

【上肢の後遺障害の序列】

等級の序列 障害の内容
第1級3号 両上肢を肘関節以上で失ったもの
第1級4号 両上肢の用を廃したもの
第2級3号 両上肢を手関節以上で失ったもの
第4級4号 1上肢を肘関節以上で失ったもの
第5級4号 1上肢の手関節以上で失ったもの
第5級6号 1上肢の用を廃したもの
第6級6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
第7級9号 1上肢に偽関節を残し、著しい障害を残すもの
第8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第8級8号 1上肢に偽関節を残すもの
第10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

例えば、上肢に「右腕の関節を肘から先で失い(4級)、左腕を手首から先を失った(5級)」という場合が該当します。併合認定に原則からいうと5級以上の後遺障害が2つあるため3級繰り上がり、1級になるはずです。

しかし、後遺障害1級3号に「両上肢を肘関節以上で失ったもの」というものがあります。この事例では、左肘は残っており、本来の1級の基準である「両上肢を肘関節以上で失ったもの」よりは軽傷だと判断されます。

この場合、「1級と同等の後遺障害が残ったと判断することはできない」と扱われるため、1つ下の等級である後遺障害2級として認定されます。

併合認定の基準をそのまま採用すると後遺障害の序列が乱れてしまうと判断された場合、例外的にこのような判断をされることもあります。

併合での後遺障害慰謝料について

なお後遺障害は1〜14級に分類され、数が少なくなるにつれて重症度が高いとされています。後遺障害として認定されると通院慰謝料とは別に「後遺障害慰謝料」というものが被害者に支払われます。等級が上位になるほど慰謝料が高額になり、等級によっては数百万円〜数千万円も変わるほどです。

例えば、後遺障害13級では後遺障害慰謝料が180万円なります(※弁護士が示談交渉した場合)。もし、さらにもう一つ後遺障害13級の症状があった場合、併合認定により等級が一つ繰り上がり12級として扱われます。

後遺障害12級の後遺障害慰謝料は290万円になるため、等級が一つ繰り上がっただけで110万円も違いが出ます。

そのため、後遺障害に該当する症状が2以上あるときは、必ず併合認定される可能性があるのかを確認しなくてはなりません。

このようなことから、併合認定を視野に入れた後遺障害申請は交通事故の専門知識に優れた人からアドバイスをもらうことが大切になります。

後遺障害が認定されるまでの流れ

後遺障害として認定されるためにはまず申請をする必要があります。申請をする時期は「症状固定」という、医師が「将来的に回復の見込みがない」と診断をしたあとに手続きを進めていきます。

症状固定と判断されたあとに「後遺障害診断書」という書類を医師に作成してもらったり、そのほかに後遺障害を立証する画像などの資料を集めたります。

必要書類が整った段階で、損害保険料率算出機構というところに後遺障害申請をします。その後、約2〜3ヶ月後に審査の結果が届きます。

このとき重要なのは、後遺障害が残った部位が複数ある場合は、それぞれの状態を詳しく記載する必要があります。

2部位以上の後遺障害が残ったという後遺障害診断書を作成しても、全てのケースで後遺障害認定されるわけではありません。

申請した部位の全てが後遺障害認定される場合もあれば、「1部位だけ後遺障害認定される」「2部位とも非該当」となる場合があることを知っておきましょう。

逸失利益を計算するのに重要な労働能力喪失率

また後遺障害が残ったことで労働能力が低下してしまうと、将来の収入に影響が出ます。ケガの影響により、本来得られたはずの収入が減ってしまった損害を「逸失利益」と言います。

併合認定で等級が繰り上がると逸失利益の金額が大きくなり、結果的に示談金が大きくなります。逸失利益は収入や「労働能力喪失率」という数値を基に算出していきます。

労働能力喪失率は、後遺障害の影響で労働能力がどれだけ低下したのかを数値で出すものです。これは後遺障害の等級によって決まっており、下記のようになっています。

等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

労働能力喪失率と事故発生時の収入、そこで発生する利息などを合わせた計算で逸失利益を割り出します。

交通事故による逸失利益は一括で被害者に支払われます。将来得られるはずの利益を先に支払ってもらうということで、逸失利益に対して利息が生じます。

その利息を計算するのに「ライプニッツ係数」というものを適用します。逸失利益を計算するのに「基礎収入」「労働能力喪失率」「法定利率」「ライプニッツ係数」などを使っていきます。

計算式が非常に複雑になるため、以下のようなイメージをで考えてください。

例:年間50万円の逸失利益を10年分→386万円

50万円×10年であれば500万円の補償になるはずですが、利息などを差し引かれるためこのようになります。

また、原則として労働能力喪失率は67歳に達するまでの年数を基準に算出されます。これは全ての後遺障害で67歳まで逸失利益が算出されるわけではなく、ケガの状態によって逸失利益が補償される年数が変わります。

例えば、後遺障害14級の逸失利益が認められる期間は約3〜5年間であることが多いです。25歳のときに14級で認定された場合、30歳くらいまでの期間で算出された逸失利益が補償されます。

これに対し、後遺障害1級のように生涯にわたって就労が不可能な状態なれば67歳までの期間で算出された逸失利益が補償されます。

後遺障害の等級によって労働能力喪失率や逸失利益が支払われる年数が変わります。併合認定により後遺障害等級が繰り上がるにつれて労働能力喪失率がどんどん高くなり、それにともない逸失利益が支払われる年数も長くなります。

後遺障害14級の併合認定により慰謝料・労働能力喪失率の基準が変わる場合

労働能力喪失率は上記の表を基準にするため、基本的に後遺障害14級は併合認定でも労働能力喪失率や慰謝料の基準は変わりません。ただ、後遺障害の併合認定された場合は同じ数値で逸失利益を算出しないこともあります。

実際、後遺障害の併合14級であっても、ケガの状況によって通常の労働能力喪失率よりも高いと判断されることがあります。

過去の裁判例では、首と腰の2部位に残った後遺障害が実際の労働に影響が大きいことが考慮され、通常の5%から9%の労働能力喪失率として認定されたものがあります。

また、むち打ちによる後遺障害と顔面へのアザが残ったことによる醜状障害の併合では、「通常よりも精神的苦痛が大きい」という理由で180万円の後遺障害慰謝料が認められた事例もあります。

180万円という後遺障害慰謝料は13級の基準になるため、併合14級という事実は変わりませんが、実質的に一つ上位の等級として認められたものと同じです。

このような事例もあるので、併合14級であったとしても労働能力喪失率や慰謝料の基準が変わる可能性があるので、併合認定されたときはまず専門家に相談するようにしましょう。

併合認定されたときの示談金を増額させる

後遺障害の併合認定をされたときは慰謝料を含めた示談金がかなり高額になります。

以下、25歳で年収400万円の会社員の事例で示談金の違いを比較してみましょう(弁護士が示談交渉をした場合)。ちなみに逸失利益は状況によって大きく変わるため、大まかな目安として認識してください。

  • 12級:後遺障害慰謝料290万円+逸失利益約1,000万円=約1,290万円
  • 11級:後遺障害慰謝料420万円+逸失利益約1,800万円=約2,220万円

等級は1つしか変わりませんが、 これだけ大きく金額が増えます。ケガに対する苦痛はもちろんですが、将来的に必要になる可能性が高い医療費を確保しておくために示談金は重要です。

ただでさえ複雑な後遺障害の制度ですが、併合になるとさらに理解しにくくなります。1つの等級の違いで被害者の将来に大きな影響を及ぼすので、後遺障害が残る可能性が高いと感じた時点で必ず専門家のアドバイスをもらうようにしましょう。

ここまでの注意点を守れば、併合によっての示談金を大きくさせることができます。