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交通事故でケガを負ってしまい、なかなか回復しなかった場合は後遺障害の申請をすることができます。後遺障害は「被害者が受けた精神的・肉体的なダメージが将来的にも回復の見込みがない状態」を指します。

後遺障害と認められ、身体的な機能に障害が残った場合は1~14級に分類された賠償額が支払われます。それでは、実際にどのようにして後遺障害の申請を行えばいいのでしょうか。ここでは、後遺障害の申請をどのような流れで進めていくのかを解説していきます。

後遺障害を申請するときに必要な条件

「首から手にかけて強いシビレが残ってしまった」「肩の可動範囲が以前の半分程度になってしまった」というとき、後遺障害が適用されます。ただ、後遺障害を申請するにはいくつか注意すべきものがあります。

将来にわたって回復が難しいと判断されるには症状固定といいます。症状固定の判断ができるのは医師のみです。そして症状固定とするには、どこかで治療期間に区切りをつける必要があります。

後遺障害として申請するには最低6ヶ月以上、整形外科(クリニック)や整骨院への通院実績がなければいけません。例えば、5ヶ月で治療を打ち切ってしまうと、後遺障害が残っていても申請すらできない事態になるので要注意です。

症状固定では、残った障害が交通事故とどういった因果関係があるのかを証明します。これには事故直後から症状が続いているのかが重要になります。例えば、「事故翌日からずっと首から手にかけてシビレが強いまま」といったようなことです。

ただ、場合によっては事故との因果関係が認められないことがあります。例えば、「事故発生2ヶ月後に腰痛や膝痛が悪化したと」いうものです。これは事故と別の原因が考えられるので因果関係は認められません。

後遺障害申請のときに取得する後遺障害診断書

後遺障害診断書とは後遺障害申請のときに必須の書類となります。

これは、医師が「今後の回復見込みがない」という判断をしたときに書いてもらうものです。等級の認定は後遺障害診断書の内容で決まるため、非常に重要な書類です。

ケガの状態を後遺障害診断書へ忠実に記載してもらえれば、狙った等級が取りやすくなります。逆に症状が適切に記載されていなければ、本来のケガに見合わない等級、もしくは認定すらされないという事態が起きてしまうのです。

例えば、交通事故が原因で首に椎間板ヘルニアが生じたケースがあるとします。医師が後遺障害診断書に、「交通事故が原因で発生したヘルニアによって神経が圧迫されている。ヘルニアが原因で首の痛みやシビレが認められ、今後の回復が難しい」という内容で書いてくれれば、14級もしくは12級の後遺障害が認定される確率が高くなります。

逆に、しっかり画像でヘルニアが認められていても、「加齢のせい」もしくは「前からあったもの」と判断されてしまうと後遺障害で等級を取ることは非常に厳しいです。

このように、交通事故で発生したヘルニアであっても、後遺障害診断書の書き方次第で大きな差が出るのです。

そのため、診察に誠意がない医師に診てもらうと、本来なら認められたはずの後遺障害が認められないということが起こります。こうした事態を避けるため、医師に誠意を感じられない場合は転院を視野に入れましょう。

後遺障害診断書を書いてもらい、レントゲンやMRIなどの必要書類が集まった時点で後遺障害の申請をします。ここから後遺障害の申請手続きが始まるのですが、申請は事前認定被害者請求という2つの方法があります。

事前認定とは

事前認定では、被害者は後遺障害診断書を保険会社に提出するだけです。その他の書類は保険会社が集めてくれて申請の手続きを代理でやってくれます。

しかし、事前認定では後遺障害の等級が認定されにくい傾向にあります。等級が認定されると、保険会社が支払う賠償額が増える可能性が非常に高いからです。保険会社の負担額が増えると、保険担当者の成績が下がる仕組みのため、被害者が不利になる内容で申請されるリスクがあります。

こうした事態を避けるため、事前認定による後遺障害申請はしないようにしましょう。

被害者請求とは

一方で被害者請求とは、本人が自賠責保険に直接申請をする方法です。

これは書類作成等を自分でやるため、手間がかかる一面があるのですが、自分有利な資料を添付することができるのです。そのため、被害者よりの結果が出やすい方法だといえます。

要は、事前認定は手間が最小限で簡単に申請ができる方法です。その反面、保険会社があいだに入るため納得のいく結果が得にくいという一面があります。

被害者請求は手続きを自分でする必要がありますが、中身を把握できます。正しく申請すれば適切な等級を認定されやすいのがメリットとしてあります。

最も軽い14級であっても、後遺障害が認められれば32万円の賠償額が増えることになります。このとき、弁護士に依頼すれば最大110万円まで後遺障害慰謝料が伸びる可能性もあります。こうした事実を考えると、被害者請求による後遺障害申請を行う方が賢明です。

後遺障害の申請をしたあとについて

後遺障害を申請したら結果が出るまで約2~3ヶ月かかりますが、場合によっては6ヶ月くらいかかることもあります。そこで等級が認定されれば賠償金が支払われます。等級が認定されなければ、そのまま示談もしくは再度申請する異議申し立てのどちらかとなります。

異議申し立てというのは、判定の結果に不服を示すことです。後遺障害の申請は何度でもできるため、納得がいかなければもう一度資料を見直して申請することができるのです。

後遺障害申請を弁護士に依頼するメリット

後遺障害申請は全て書面だけで審査されます。そのため、具体的な障害部分を綿密に書類へ記載する必要があります。

納得のいく等級をもらうには、事前認定ではなく自ら行う被害者請求がベストです。ただ、一般の方が書類作成をするには専門知識が足りません。どうやって診断書を書いてもらうかなどを含め、認定されやすくする後遺障害に申請方法はわかりません。

そこで、後遺障害申請を行うときは弁護士に依頼するのが最適です。

交通事故に強い弁護士に依頼することで後遺障害が認定されやすくなりますし、複雑な手続きを代わりにやってくれるのは非常に心強いものとなります。

また、弁護士があいだに入るだけで慰謝料が大きく増額されるメリットもあります。例えば後遺障害12級は、弁護士に依頼しなければ93万円となります。一方、弁護士に依頼して交渉をしてもらった場合は最大290万円まで増えます。

弁護士を通すか通さないかというだけで、賠償額が何倍にも膨れ上がるのです。もちろん等級が上がればさらに増額の幅も大きくなりますので、後遺障害申請は弁護士事務所に必ず相談するようにしましょう。

後遺障害について疑問が出たらすぐ弁護士に相談すべき

交通事故後の対応は発生直後から重要になってきます。例えば、交通事故による慰謝料をもらうためには、事故発生から2週間以内に「痛めた部位を記載してもらった診断書」を取得する必要があります。医師に診察してもらい、痛めた部位の記載がなければ補償が認められません。

交通事故から2週間を過ぎて取得した診断書では、交通事故との因果関係がないと判断されてしまいます。

また、交通事故が発生して2週間以内に診断書をもらうなどして、事故直後の対応ができたとしても油断してはいけません。診断書をもらったあとは整骨院や整形外科(クリニック)などで治療を行うようになりますが、治療間隔が1ヶ月以上空くと「治療の必要性がなくなった」と判断され、補償が打ち切りとなります。

1ヶ月ほど治療間隔が空くことがなくても、1~2週間ほど治療をしていない期間が頻発すると「症状が深刻ではない」と後遺障害が認定されにくくなります。

海外出張や出産などで通院間隔が空いてしまうケースについて

特殊なケースとして、長期の海外出張があります。「通院したいけどできない状況」というのは事前に保険会社に連絡しておけば大丈夫なことが多いです。

できることなら、海外滞在中も現地の病院に通院できれば理想です。そこで、一時的に海外現地の病院へ転院するため、医師に紹介状を書いてもらいましょう。

紹介状を保険会社に送れば翻訳してくれて、現地の医師が見てもわかるようにしてくれます。海外滞在中であっても、少しでも治療した実績があるのが望ましいです。これは海外出張だけに限らず、出産などの特殊な事情も含まれてきます。

注意点としては、海外出張や出産で治療を休むのが事後報告だと補償の継続が難しいということです。治療を一時的に休むことを先に伝えておかなければ、保険会社も、「そんなことは聞いていない」と補償を打ち切ってくる可能性があります。そのため、長期で通院できない状況が事前にわかっていたら必ず、保険担当者へ事情を説明するようにしましょう。

弁護士と打ち合わせてから、後遺障害申請のタイミングを考えるべき

定期的な通院実績があれば後遺障害認定の可能性は残されます。ただ、海外で滞在しているときの治療費は、単価の基準が日本と異なるので全額補償とは限りません。過去の判例では、アメリカでの治療費を全額ではなく、半額を保険会社が補償したというものがあります。

また、後遺障害を申請するタイミングも重要です。むち打ちであれば、6ヶ月ほど整骨院や病院に通った時点で申請すればいい場合が多いです。しかし、マヒが残ってしまったときや臓器にダメージがある場合は、さらに期間が経過した方が等級は高くなるため、賠償額をよりたくさん取れるようになる場面もあります。

ただ、「病院と整骨院を併用してもいいのか」「病院をメインにしなくては後遺障害の認定が難しいのか」「どれくらいの通院頻度がいいのか」などに関しては、交通事故を扱う専門家でなければ判断が難しいです。少しでも疑問がある場合、そうした機関へ相談するといいです。

このように、後遺障害を申請するときには適切な流れがあります。ただ、自らの力で申請するのではなく、必ず交通事故の専門知識に優れた人に頼るべきです。

ただでさえ後遺障害で等級を取るのは厳しいので、綿密な戦略を立てて準備していく必要があります。後遺障害に詳しい弁護士に依頼することで等級が認定されやすく、さらに慰謝料も大幅に上がります。

納得のいく形で終わるためにも早めに交通事故に強い弁護士に相談しましょう。