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交通事故で負ったケガが完全に治らなかったとき、後遺障害として申請することが可能です。このとき、残った症状が1~14級に分類された項目に当てはまれば等級に応じた賠償額が支払われます。

それは、生涯に渡って補償が継続されないからです。回復の見込みがなくなり後遺障害が残った時点で、等級に応じた賠償額を支払って解決するものです。

後遺障害は、等級が一つ変わるだけでも賠償額は数十万から数百万円の差が出ます。例えば最も低い等級の14級は賠償額が最高110万円ですが、13級では最高180万円になります。そのため、自分の症状が何級の後遺障害に認定される可能性があるのかを明確に把握する必要があります。

ここでは、1~11号まである後遺障害13級の認定基準について解説していきます。

後遺障害の申請前の確認事項

交通事故にケガが治り切らなかった場合、全てが後遺障害として認定されるわけではありません。各等級で定められた基準に該当しなければ賠償額が発生しません。そのため、残ってしまったケガがどの等級に当てはまるのかを慎重に見極めていく必要があります。

ケガの状態以外にも、後遺障害の認定にはいくつか確認事項があります。以下のように、後遺障害として申請できる条件が整っているか確認するといいです。

交通事故とケガの因果関係が認められる

後遺障害と認められるためには、「交通事故で負ったケガが原因」だと判断される必要があります。交通事故後から時間が経過してから発生した症状だと、審査の対象外となる可能性があります。

そのため、交通事故発生後にどの部分を交通事故でケガをしたのかを、医師の診断書に記載されていることが重要です。

発生状況も重要な根拠となってきます。例えば、車同士が明らかに低速で衝突した事故では、「内臓の機能低下」を訴えても交通事故による後遺障害ではないと否認されます。

このように、ケガの深刻度や事故状況によっては後遺障害が認定されないケースもあるので注意が必要です。

交通事故発生から定期的に医療機関へ通院している

残ってしまった症状を後遺障害として申請するには、「症状固定」として医師に診断してもらう必要があります。症状固定とは、「ケガが今後、回復する見込みがない」と判断されることを指します。

注意点としては、症状固定と診断されるには最低6ヶ月以上の通院実績が必要になってくることです。ただ、指や足などを切断したケガでは、4・5ヶ月で症状固定をして後遺障害申請をすることもあります。

症状固定は6ヶ月の通院が基本的な期間で、前述の通り状態によっては6ヶ月未満でも大丈夫ですが、被害者自身で症状固定の時期を判断するのはダメです。症状固定の時期は非常に重要なポイントとなるので、必ず医師や弁護士と相談して決めましょう。

最初から最後まで訴えている症状が一貫している

交通事故によるケガが、症状固定まで断続的に続いたかどうかも後遺障害認定には重要なものになってきます。

例えば、「まつげが半分以上なくなったけど、途中から生えてきた」「一時的に視力が落ちたけど、徐々に回復してきた」というような症状では後遺障害として認定されません。

このように、事故発生から症状の波が大きいと、症状の一貫性がないと判断されすくなるのです。そのため、後遺障害として認定されるには不利な状況となってしまうのです。

画像または数値で立証できる

後遺障害は、残ってしまった症状を医学的に説明できるかが重要です。後遺障害の認定に最も効果的なのが、「他覚的所見」があるものです。要は、「他人が見て判断できる画像や数値」です。

「指を切断した」「足が◯㎝短くなった」というように、機能に障害を残した明確な根拠があれば後遺障害として認定されやすくなります。

「失ったもの」「用を廃したもの」の違い

後遺障害13級では頻繁に「~を失ったもの」「~の用を廃したもの」という言葉が出てきます。

まず、「失ったもの」というのは「指の根元の近くから切断したもの」です。一方で指先だけを切断したものは「用を廃す」と表します。また、「折れた骨の一部がくっつかないままの状態」も「失ったもの」とされています。

「用を廃したもの」というのは、「指先(第一関節から先の部分)の半分を切断」「可動範囲が半分以下」「感覚がなくなる」ということを表したものです。

後遺障害13級のとされる症状について

後遺障害は数が少なくなるほど重症度が増してきます。13級は2番目に軽い後遺障害のため、症状によっては健常者と大きく変わらないケースもあります。

また、後遺障害13級の特徴としては「神経に関する症状」が含まれていないため、13級に該当するケースは非常に少ないです。後遺障害の全体で13級は1%に届かないくらいの確率です。

13級は労務への支障はそれほど大きくないと捉えられています。しかし、等級が認定されると賠償額が大きく増えるので、自分の症状が項目に当てはまっているか慎重に確認すべきです。

後遺障害13級は認定件数が少ないため、専門知識がなければ見落としてしまう危険性もあります。そのため、1~11号の項目に当てはまる可能性がないか、しっかり専門医に検査をしてもらいましょう。

1号:1眼の視力が0,6以下になったもの

交通事故のケガが原因で視力が下がったり、視力に関して何らかの障害が残ったりしてしまったときに後遺障害として認定されます。後遺障害13級の1号は片方の眼(1眼)の視力が0,6以下になってしまった場合です。

もともと0,6以下の人はたくさんいますが、交通事故が原因で視力が低下した場合は後遺障害認定の可能性があります。また、視力0,6というのは裸眼ではなく視力矯正をして0,6以下というのが条件となります。要は、メガネやコンタクトレンズをしても視力が0,6以下ということです。

直接眼に衝撃を受けなくても、眼に異常が発生するケースがあります。そのため、交通事故で頭や首などを強く痛めて、眼に違和感を覚えたら必ず眼科で検査をしましょう。

2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

複視というのは、物が二重に見えてしまうことです。「乱視」と似ているとされていますが、複視と明確に分類されています。

乱視は片目でも両目でも二重に見えてしまいます。それに対して複視は、片方の眼で見ると二重にはならないが両目で見ると二重になってしまう症状です。

常に症状が出ているのではなく、正面以外の上・横・下などを見たときに複視の症状が出てしまうものが後遺障害の対象となってきます。また、正面を見たときに複視の症状が発生していたら、13級よりもさらに重症度が高い「後遺障害10級2号」に該当する可能性があります。

もし、後遺障害10級に認定されると最大550万円と、13級に比べて大幅に慰謝料が増額されます。そのため、複視の症状が発生したら定期的に眼科への通院しておきましょう。

3号:眼に半盲症、視野狭窄、または視野変状態を残すもの

片目に半盲症という「視野の左右どちらかが欠けて見えなくなってしまう症状」が後遺障害認定の対象となってきます。また、一点を見つめているときに見える外界の広さも重要です。要は視野が狭くなってしまうことを「視野狭窄」です。

検査するときは、「ゴールドマン視野計」「フリッカー検査」という視野を調べる機器を使用します。そこで、正常の数値よりも60%未満となるものが視野障害とされています。

4号:両眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの

まぶたを閉じたとき、両方の眼球の「白目」の一部が覆えない状態になったことをいいます。このとき、「黒目」が覆えているかどうかをしっかりチェックしましょう。もし、黒目が覆えないほど重症であれば後遺障害13級ではなく、さらに賠償額が増える9級に該当する可能性もあります。そのため、専門医に的確な検査をしてもらうといいです。

まぶた自体は症状がなくても、まつげが半分以上生えてこなくなった状態も後遺障害の対象となります。

なお、このときはまぶた・まつげに関する後遺障害のため、「眼球」自体は関係ありません。

5号:5歯以上に歯科補綴(ほてつ)を加えたもの

交通事故でのケガで歯を5本以上失ったり、大きく欠損したものは後遺障害として認定されます。歯科補綴(しかほてつ)というのは「差し歯」など、歯に対して何かしらの処置を施すということです。処置をして機能が回復したとしても、5歯以上の歯を治療したのであれば後遺障害認定の対象となります。

このとき、欠損した歯の両サイドの健康な歯を削り、「橋」を掛けるように人工歯を被せて、欠けた歯を補強する「ブリッジ」という治療があります。治療を目的にして、健康な歯に処置をしたものも歯科補綴としてカウントされます。

ただ、大臼歯(親知らず)や乳歯に関しては、後遺障害認定の対象外となります。基本的には永久歯のみが後遺障害の対象とされています。

6号:1手の小指の用を廃したもの

片方の手の小指の機能に関する後遺障害です。左右どちらかの末節骨(第一関節)という指先の骨が欠損してしまい、長さが半分以下になってしまった場合や、小指の根元近く(第二関節)の可動範囲が半分以下になってしまったものが後遺障害の認定対象となります。

また、小指の感覚が全くなくなった場合も後遺障害として認定されます。これらは全て当てはまるのではなく、「小指の先が欠損」「小指の根元あたりの可動範囲が半分以下」「小指の感覚がなくなる」といった症状のうち、一つでも当てはまれば後遺障害認定の可能性があります。

7号:1手の親指の指骨の一部を失ったもの

後遺障害13級6号は小指でしたが、7号は親指に関するものです。これは、交通事故によって親指の一部が欠けたものをいいますが、折れた骨がくっつかないという「遊離骨折(ゆうりこっせつ)」も後遺障害として認定の対象となってきます。

このとき、レントゲン写真やMRIの画像ではっきりと確認できる資料が重要になってきます。そのため、専門医に明確に患部を撮影してもらいましょう。

8号:1下肢を1㎝以上短縮したもの

太ももの骨を骨折したときなど、片足の長さが反対の足に比べて短くなったものが後遺障害の対象となります。このとき、どれだけ足の長さが短くなったかで後遺障害の等級が変わります。

片足が反対足に比べて1㎝未満しか短くなっていなければ、後遺障害の対象外となります。1㎝は、整体でも長さを揃えることが可能な範囲でもあり、日常生活に支障が出ないほどの差と考えられています。1㎝程度、足の長さに差があるのは健常者でもよくあることも要因として挙げられます。

要は、足の長さが最低でも1㎝以上の差がなければ後遺障害認定の対象とはなりません。

後遺障害として、片足が1〜3㎝未満短くなったものは13級が対象として審査されます。なお、片足が3〜5㎝短くなったものは後遺障害10級の可能性があります。5㎝以上であれば後遺障害8級の対象となります。長さによって等級が大きく変わってくるため、計測は慎重にしてもらいましょう。

9号:足の第3の足指以下の1、または2の足指を失ったもの

非常にわかりにくい内容ですが「足の第3指以下」というのは、足の「中指」「薬指」「小指」の3本のことです。この3本のうち1~2本の指を、指先(第一関節)もしくは根元から切断したものが後遺障害の対象となります。

10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの

こちらも後遺障害13級9号と同じように、文章からは理解しにくい内容となっています。まず、「1足の第2の足指の用を廃したもの」というのは、片足の人差し指のことです。足の人差し指の指先(第一関節)から根元の手前で、切断されたものや可動範囲が半分以下になってしまったものが後遺障害の対象となります。

次に「第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの」とは、片足の人差し指を含めて「中指」「薬指」「小指」うち1本のことです。片足の人差し指プラス1本が、指先(第一関節)から根元の手前で切断されたものや可動範囲が半分以下になってしまったものが後遺障害の対象になります。

さらに「第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの」というものもあります。これは、足の「中指」「薬指」「小指」3本の指が対象になります。3本の指全ての指先(第一関節)から根元の手前で切断されたものや可動範囲が半分以下になったものが後遺障害の対象となります。

11号:胸腹部臓器の機能に障害を残すもの

交通事故で受けたダメージによる内臓の後遺障害ですが、13級では対象となる臓器が決まっています。それは、「胃」「胆のう」「膵臓」「腎臓」「睾丸」「卵巣」です。これらの臓器を失ってしまうか、一部を切除したり機能障害になったりしたことに対するものが補償の対象です。

まず、胃に関しては、全部を切除もしくは一部を切除したものが後遺障害の対象です。このとき、胃の切除によって「消化吸収障害」「逆流炎食道炎」や、食べたものが小腸へ急激に流れ落ちてしまう「ダンピング症候群」などの症状が発生していないか検査をしてもらいましょう。

これらの症状が発生していたら、後遺障害13級よりもさらに賠償額が増える等級として認定される可能性があります。

次に胆のう、膵臓、腎臓では、「失った場合」が後遺障害として認定の対象となってきます。また、腎臓に関しては両方でなく片方だけで後遺障害の対象になります。慢性腎不全など、「著しく機能を失った場合」も後遺障害として認定される可能性があります。その際、腎臓機能の障害レベルによっては後遺障害13級よりも賠償額が増える等級に認定される可能性があります。

生殖器の後遺障害にあたる睾丸と卵巣ですが、ともに片側が失われたものが後遺障害認定の対象となります。要は「一側の睾丸を失ったもの」「一側の卵巣を失ったもの」に当たります。生殖行為は問題なく可能であるが、生殖機能にわずかな障害が残ったものになります。

また、睾丸については片側を失うことがなくても、萎縮の程度が大きければ失ったと判断されることもあります。

後遺障害13級として認定されたときの慰謝料について

交通事故によるケガで後遺障害13級が認定されると、慰謝料が支払われます。このとき、慰謝料を決める基準は「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つに分類されます。同じ後遺障害13級であっても、大きく慰謝料の金額が変わります。

自賠責保険では、後遺障害13級に認定されると57万円の慰謝料となっています。これは、自賠責保険が「最低限の補償」という目的のため、低い金額設定となっているのです。

任意保険の基準は独自の算定基準となっており、原則的に金額設定を非公開としています。自賠責保険基準よりわずかに高い金額設定で、60万円を超えるかどうかという慰謝料です。

この中でも、弁護士基準が最も慰謝料が多い基準となっています。これは過去の裁判例をもとに金額設定をしているため、高額になっています。この慰謝料の目安というのは「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」という、別名「赤本」と呼ばれるものに記載されています。

弁護士基準の慰謝料では自賠責保険基準の57万円と大きく変わり、180万円までアップします。このように、同じ等級であっても100万円以上の差が出てくるのです。将来的な医療費を考えると非常に大切な補償となります。そのため、後遺障害の申請は弁護士に相談すべきです。

弁護士事務所に相談した方がいい理由

後遺障害13級は専門知識が豊富でなければ、後遺障害として認定される可能性が非常に低くなってしまいます。それは、13級に該当するケースが非常に少ないため、交通事故専門の知識がなければ見落としてしまう危険性があるからです。

また、後遺障害13級は各項目で2つ以上該当するものがあるときは、重い方の症状を一つ繰り上げるという制度があります。要は、「後遺障害13級の項目で2つも該当しているのであれば、1ランク重症度を上げて12級として認定する」ということです。

このように、細かい条件によって賠償額の基準が変わるので弁護士による専門家の力は必要不可欠です。仮に12級と認定されれば、弁護士基準で慰謝料が290万円まで変わります。つまり、13級が12級になるだけで賠償額が110万円増えます。そのため、自分や医師だけでなく弁護士も力を合わせた方が被害者にとってメリットは大きいです。

後遺障害13級の1~11号の項目に当てはまる可能性があれば、すぐに交通事故に強い弁護士に相談しましょう。後遺障害の申請だけでなく、症状固定の時期なども含めてアドバイスをしてくれます。

弁護士費用についても高額だと思ってしまいがちですが、全てが高額になってしまうわけではありません。弁護士に相談する前に自分が加入している任意保険の内容を確認するといいです。

「弁護士費用特約」というプランに加入していれば、保険会社が300万円まで弁護士費用を負担してくれる優れた補償です。加入していればすぐでも使うべき特約です。

もし、弁護士費用特約に未加入であっても問題ありません。「着手金なし」「完全成功報酬」で依頼可能な弁護士事務所であれば、リスクがなくて済みます。

後遺障害13級になると賠償額が高額になるため、弁護士費用が発生してでも依頼するべきケースがほとんどです。後遺障害は専門家に任せなければ認定される確率は大きく下がります。適切な慰謝料をもらうためにも、早めに弁護士に相談するといいです。