b24ad6f6e521b030d26cf6bc127c9096_s

交通事故でケガを負ってしまい、一定期間のあいだ治療をしても症状が残ったことを後遺障害といいます。後遺障害を負ってしまうと、痛みが残ることやケガした部位の機能が低下してしまうことが起こります。

それでは、どのような場合を後遺障害というのでしょうか。また、後遺障害になったときはどのような対処をすればいいのでしょうか。ここでは交通事故に欠かせない慰謝料や後遺障害による賠償額の違いについて紹介します。

後遺障害とは何か

後遺障害とは、「被害者が受けた精神的・肉体的なダメージが将来的にも回復の見込みがない状態」のことを指します。また、骨折やむち打ちによるシビレなど、交通事故によって残ってしまった症状について、交通事故とのあいだに明確な因果関係が認められ、医学的に証明ができることをいいます。

後遺障害が起こると、労働能力の低下や喪失を伴います。要は身体を動かしにくくなったり、痛みが消えなかったりするのです。

このとき、後遺障害は症状によって1~14等級に分類されます。このときの等級は14級から1級と数が少なくなるに連れて重症度が増します。

そして、等級が上位になるほど賠償額が増える仕組みになっています。この制度をシンプルにいうと、「残った症状を生涯に渡って補償を続けることはできないので、先に基準となる賠償額を支払うことで解決する」という仕組みです。

後遺障害に認定されると、通常の慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が追加で支払われます。また、後遺障害によって労働力が低下し、将来得られたはずの収入を補償する逸失利益(いっしつりえき)という制度もあります。

事故の被害者にしてみれば、この先ずっと医療費が必要になります。多めに慰謝料を回収しなければ帳尻合わせができないため、被害者にとっては非常に重要な申請となります。

後遺障害と後遺症の違い

後遺障害とよく混同してしまう言葉として、後遺症というものがあります。実は、後遺障害と後遺症は全く別物です。

治療を継続したけど痛みや違和感、神経症状が残ってしまったものは後遺症です。ただ、交通事故の制度では1~14等級の基準に当てはまるものを「後遺障害」と呼び、当てはまらないものは「後遺症」となっています。

例えば、同じむち打ちで痛みが残っていても、骨や神経に異常がなければ後遺障害の認定は非常に難しいです。しかし、むち打ちが原因で患部に神経損傷が証明できれば、14級の後遺障害と認定されます。2つともほとんど同じ意味で使われていますが、補償の観点から見ると非常に大きな違いがあるのです。

後遺障害の見分け方

後遺障害が残ったかどうかを判断する材料として、他覚的所見というものがあります。これは単純に見た目で判断できるかどかというものです。わかりやすい例としては、折れた骨がくっついたけど、変形して癒合したなどです。この例はレントゲンで見たとき「骨が変形してくっついている」と外見から変形を判断できるため、後遺障害と認定されやすくなります。

しかし、見た目で事故前と事故後の変化がわからないものは後遺障害として認定されにくいです。

例えば先ほどのむち打ちなど、自覚症状では痛みがあるけども、レントゲンやMRIで骨などに異常が見つからない場合が多いです。痛みで日常生活に支障が出ていても、後遺障害とは認定されにくいのが現状です。

見た目の変化はないのでたとえ日常生活で支障が残っていたとしても、それは後遺症であり後遺障害ではないのです。

補償時期や通院頻度で後遺障害になるかどうかが異なる

また、後遺障害が認められる症状であったとしても、補償を打ち切る時期や通院頻度によって、後遺障害が認定されるかが左右されたりもします。

基本的に後遺障害は最低6ヶ月の治療実績がなければ申請ができません。6ヶ月以上の治療を継続したけど、今後の回復が見込めない状態だと医師が判断するケースを症状固定といいます。

症状固定は医師のみが判断でき、保険会社が判断したり誘導したりすることはできません。

そのため、例えば治療開始から6ヶ月以内に保険会社が「症状固定なので補償は打ち切りです」ということを言ってきた場合は要注意です。後遺障害が認定される症状であっても6ヶ月以内に補償を打ち切れば、申請すらできなくなるからです。

保険会社としては、後遺障害申請をされると自社の利益が減ってしまうため、後遺障害申請をさせないために早めの打ち切りを提案してきているといえます。

症状が残っているのであれば、安易に治療の打ち切りをしてはいけません。

また、いくら身体機能が低下していても通院頻度が月に数回程度と少なければ、「治療の必要性があまりない」と捉えられてしまいます。その結果、後遺障害として認定されにくくなります。そのため、身体に痛みが残っているからといって全てが後遺障害として認められるとは限らないのです。

後遺障害かどうかで補償額が大きく変わる

こうしたことから、交通事故によるケガなどで身体を痛めるなど何かしらの障害を伴ったとき、専門知識のある人へ相談するようにしましょう。保険会社への対応や通院日数が異なるだけで、慰謝料の額が大きく異なるからです。

また、交通事故に詳しい弁護士事務所と相談することも重要です。

申請の内容、依頼している弁護士事務所の対応方法によって、等級が取れるかどうかが大きく変わってしまうのが後遺障害です。後遺障害は審査が書面だけで判断されるため、適切な申請をしなければ本来取れるはずの等級を取れないことがあります。または、後遺障害すら認定されないという事態も起こりえるのです。

実例でみる後遺障害認定

実際のところ、1等級違うだけで慰謝料が100万円〜数百万円ほど変わることも珍しくありません。

例えば私が知っている人の中には、むち打ちの症状が回復せず、保険会社に任せて後遺障害申請をした人がいます。しかし、最初は認定されずに等級をもらえませんでした。要は後遺障害の認定をもらうことが出来なかったのです。

そこで納得がいかず、今度は弁護士事務所に依頼をしました。首から手にかけてシビレ(神経症状)があったため、それを根拠に弁護士を通して再申請したところ、14級の後遺障害と認定されたのです。

申請が通らないままだと、後遺障害の補償はなしでした。ただ、14級と認定されたことで後遺障害の慰謝料が110万円になりました。要は単純に賠償額が110万円増えたのです。このときの弁護士への相談が相談料は無料だったことを考慮すれば、弁護士を通すことでほとんど仕事をせずに慰謝料を大幅に増やすことに成功したといえます。

もちろん、等級が上がれば増額の幅は大きくなります。どれだけ等級を上げられるかどうかは弁護士の腕にかかってきます。

こうしたことから後遺障害の申請をする場合は必ず交通事故に関する知識が豊富な専門家にまかせましょう。後遺障害について理解を深め、交通事故によってケガを負ったときは早めに相談するといいです。