交通事故によるケガが治りきらなかったとき、後遺障害として認定される可能性があります。後遺障害は1〜14級に分類され、数が少なくなるにつれて重症度が増していきます。それぞれの等級によって基準が設けられ、該当する症状があれば、後遺障害として認定されます。

しかし、後遺障害の基準に該当しても全て等級が認定されるわけではありません。後遺障害はケガの状態だけではなく通院頻度や交通事故発生の状況などを考慮して、後遺障害との因果関係を調査されるのです。

車同士の交通事故の場合、損傷した車の修理費用にいくらかかったのかも後遺障害を立証するうえで重要なポイントといえます。

ここでは、車の修理費用が後遺障害の認定にどのような影響を与えるかを解説していきます。

後遺障害として認定までの流れ

交通事故によってケガが残ってしまったとき、1〜14級で細かく分類された基準に該当すれば後遺障害として認定されます。後遺障害として認定するのは病院の医師、もしくは保険会社に権利があると思っている方がいますが、これは間違いです。後遺障害を認定するのは「自賠責損害調査事務所」というところです。

「(このケガは)将来的に回復する見込みがない」と医師が診断したとき、後遺障害として申請する準備に入ります。このとき、「通院頻度」「レントゲン写真やMRIなどの画像」「事故発生状況」、医師の発行する「後遺障害診断書」などをもとに、自賠責損害調査事務所が交通事故と後遺障害の因果関係を審査します。

車の損傷が少なければ身体への衝撃も少ないとみなされる

後遺障害として認定されるために、交通事故以前にもともとあった症状なのか、交通事故によって残った症状なのかを区別する必要があります。後遺障害として認定されるには交通事故とケガの因果関係を立証することが重要です。このとき、事故発生状況が非常に大事なポイントになります。

例えば、追突事故の被害に遭い、むち打ちの症状が残ったケースがあるとします。玉突き事故になるようなスピードで激突してきたケースでは症状がひどくなることが予想され、事故状況とケガの重症度が合致します。

しかし、時速20㎞ほどのゆっくりとしたスピードで追突されて、「むち打ちが治らず後遺障害が残った」と主張しても、事故状況から考えてケガが重症化するとは考えにくいです。そのため、スピードがあまり出ていない交通事故では、ケガが残ってしまったものであっても後遺障害として認定されにくい傾向にあります。

このように、ケガの重症度と交通事故が起きた状況も後遺障害として認定されるための重要な要素といえます。

車の修理費が30万円以下であれば後遺障害の認定は不利になりやすい

交通事故による後遺障害を証明するには事故発生の状況が重要です。衝撃の大きい事故だといえる目安は「車の修理費用」です。車へのダメージが大きければ必然的に身体への衝撃も大きくなります。大きな衝撃であればあるほど車を修理する箇所や部品を交換しなければならないところが増えます。

衝撃が大きい事故だと判断するラインとして、車の修理費用が30万円以上、必要となれば身体へのダメージも大きいと判断されやすい傾向にあります。逆に30万円以下の修理費用では、それだけ車への衝撃が少なかったと判断されるので後遺障害を証明しにくい状況となります。

自転車やバイクでの交通事故だと修理費は重要ではない

修理費が後遺障害に審査に影響を与えるのは車同士の交通事故です。自転車やバイクに乗車しているときにおこった交通事故の車両の修理費については重要視されていません。

いくら車両の修理費が安価で済んだとしても、自転車やバイクの後遺障害は事故のケガの状況により判断され認定されます。

理由としては、自転車やバイクというのは車両に乗っても身体がむき出しになっているからです。自転車やバイクの交通事故の際は低速であっても、転倒したときの体勢などで重症化する可能性は十分にあるため、後遺障害が残ったとき事故との因果関係が認められやすい傾向にあります。

弁護士へ相談するタイミング

前述した通り、交通事故で残った後遺障害を立証するにはさまざまなポイントがあります。非常に複雑な制度のため、被害者だけで全ての手続きを進めるのは困難です。医師へどのように症状を伝え、いつ治療を終えるべきなのかなど後遺障害の認定される等級が異なってきます。

そのため、交通事故に遭ったらできるだけ早い時期に弁護士へ相談することが望ましいです。弁護士を通すことで、「治療を終えたけれど、どうしても具合が悪い」など後遺障害が残る可能性があったり、保険会社の補償額は適正なものなのか判断してもらったりと、弁護士に依頼するメリットが多くあるからです。

弁護士に依頼すると被害者(あなた)の代理人として、保険会社と交渉してくれます。基本的に保険会社は代理人である弁護士と交渉をするため、被害者は保険担当者と直接やり取りをする必要がなくなります。これにより理不尽な対応(例えば、保険会社による不当な補償額の提示など)をされるリスクが大きく減ります。

交通事故に詳しい弁護士は、「被害者に後遺障害が残る可能性がある」と思えば、後遺障害を認定してもらうために申請する必要な情報を教えてくれます。

また、後遺障害の認定が難しい状態であったとしても、適切な通院期間を得られるよう保険担当者と交渉をしてくれるので被害者にとって非常に強い味方となってくれます。

交通事故で適切な補償を受けるためには弁護士の力が必要不可欠です。交通事故被害にあったときは、信頼できる弁護士を早く見つけましょう。