交通事故では車同士の交通事故やバイク事故、自転車事故など発生状況はさまざまです。数ある交通事故のなかでも、子供の飛び出しが原因で発生するものが多いです。

交通事故の発生状況から、どちらに多く落ち度があったかを数字で割り出す「過失割合」というものがあります。子供の飛び出しによる交通事故での過失割合を決める場合、「小さい子供の判断能力」についてトラブルになりやすい傾向にあります。

これは、運転手側からすれば「予想できない状況で飛び出されたら事故を回避できない」という言い分と、「まだ子供で判断能力が備わっていないから、運転手がしっかり回避すべき」という家族側の意見がぶつかるからです。

ここでは子供の飛び出しで起きた交通事故の場合、どのような過失割合になるかを解説していきます。

交通事故で子供にも過失が発生するケースについて

交通事故では完全に加害者側に過失がある場合、0:100という形となります。双方に過失があるときは15:85や30:70というように、5%単位で割り出していきます。

基本的に青信号で横断歩道を歩いて渡っているとき、車が衝突してきた交通事故は、大人でも子供でも歩行者の過失はゼロです。一方で、信号や横断歩道のない道路で起きた交通事故は、いくら歩行者といえど、過失は発生してきます。

状況にもよりますが、大人の歩行者であれば10〜40%前後の過失が認められることが多いです。子供が歩行者である場合、大人の過失割合よりも5〜20%ほど過失が低くなります。

ただし、一言に「子供」といっても「幼児(6歳未満の子供)」と「児童(6歳以上13歳未満の子供)」では過失が若干変わるので注意が必要です。

交通事故では、「幼児」より「児童」の方が5〜10%ほど過失が大きくなります。

子供の過失割合で焦点となるのは「事理弁識能力」があるかどうか

子供の飛び出しなどによる交通事故では子供に「事理弁識能力」が重要なポイントとなります。

「事理弁識能力」とは、自分の行動に対して善し悪しが判断できる能力のことをいいます。例えば、横断歩道のない道路を突然飛び出したら交通事故が起こる恐れがあると判断できるかどうかといった能力のことです。

裁判所では5・6歳以上なら事理弁識能力があると考えられ、5歳未満であれば事理弁識能力がないと判断されることが多いです。

ただし、子供に事理弁識能力がなく過失割合が低くなったとしても、親または保護者が「監督義務違反」として責任を問われることがあります。しかし「少し目を離した隙に、いきなり子供が道路に走って行ってしまった」というような、保護者が子供の動きを予測できないことはよくあります。

そのため、親や保護者に監督責任があるかを問われたとしても過失は10〜30%ほどになることが多いです。

横断歩道・信号機があるかないかで過失割合は大きく変わる

歩行者と車両による交通事故では「横断歩道や信号機があったかどうか」で過失割合は変わってきます。それは、歩行者と運転手の注意義務の範囲がそれぞれの場面によって違ってくるからです。

それでは子供の飛び出しによる交通事故の過失割合は、横断歩道・信号機があるかないかでどう違ってくるのでしょうか。

わかりやすいものでいえば「信号の色」です。事故当事者側の信号が赤・青・黄色の場合によって過失割合が大きく変動します。もちろん赤信号を無視して交通事故が起こった場合は、信号無視をした人の過失が圧倒的に大きくなります。

また横断歩道と信号機の有無だけではなく、状況によっても細かく過失が異なります。

例えば、「夜間」「車の脇見運転」などの状況です。さまざまな状況によって過失割合が5〜10%ほど、高くなったり低くなったりします。

子供が信号機のある横断歩道を渡っていた場合の交通事故

車やバイクを運転している人は、横断歩道を渡っている人の安全を守る義務があります。そのため、子供や大人といった年齢は関係なく、青信号で横断歩道を渡っているときに起きた交通事故は、基本的に歩行者に過失は発生しません。

ただし、歩行者側での黄色信号は本来、「道路を横断してはならない」「横断した人はすぐに渡りきってしまうか、引き返さなくてはならない」という規制があります。

そのため、黄色信号に変わった状態で子供が横断歩道を渡っているときに発生した交通事故の場合、幼児あれば最大20%、児童であれば最大30%の過失が発生します。

また他にも、相手の車両が青信号か黄色信号で渡ってきたのかによっても、過失割合は変わってきます。

歩行者側の信号機が黄色信号であっても、車両側の信号機は青信号のことが多いです。そこで子供の歩行者が黄色信号の横断歩道を渡っているとき、青信号を右左折してきた車と衝突した交通事故では、幼児は20%の過失で児童は30%の過失となることになります。

歩行者と相手の車の信号がともに黄色だった場合、過失割合は幼児が10%、児童が20%となります(大人の歩行者の場合では過失30%)。黄色信号のとき「車両は停止線を越えてはならない」「他の交通に注意して進行すること」という規制があるため、車両の過失は10%ほど高くなります。

歩行者が赤信号を無視して横断歩道を渡って発生した交通事故の場合(歩行者の信号無視)、相手の車両は青信号であれば交通違反をした歩行者の過失が大きくなります。

歩行者が大人であれば70%の過失が発生します。歩行者が子供であれば、判断能力の低さから若干過失割合が修正されます。しかし、それでも児童60%、幼児50%という高い過失割合になります。これは、運転手は信号を無視してきた歩行者を予見する義務がないからです。

そのため、たとえ子供であったとしても赤信号で横断歩道を無視して渡った交通事故の場合、過失がかなり大きくなるといえます。

子供が信号機のない横断歩道に渡っているときの交通事故

信号機のない横断歩道を歩行しているときに発生した交通事故では、基本的に大人であっても子供であっても歩行者の過失はゼロです。理由として、運転手は横断歩道の手前を走行するときは「いつでも停止できるスピードで走行する義務」があるからです。また、横断しようとしている人がいれば「一時停止する義務」があります。

信号機のない横断歩道では車やバイクの運転手は歩行者の横断を予見しなければならないため、歩行者に過失が発生することは少ないといえます。

「歩行者からは容易に衝突を回避できるが、車からは歩行者の発見が困難」という特殊な状況であった場合、歩行者が大人であれば過失が10%発生することもあります。例えば「路上駐車している車の陰から急に歩行者が飛び出した交通事故」などです。

ただ、このような「車からは歩行者を見つけにくい」といった状況でも、幼児・児童であれば過失は発生しません。なぜなら、たとえ過失が10%発生したとしても幼児・児童は過失割合が10〜20%少なく修正されるため、結果的に過失がゼロになるからです。

横断歩道のない道路へ急に子供が飛び出して発生した交通事故

交通事故は子供が急に道路へ飛び出して発生する状況が多いです。車やバイクを運転していて歩行者と衝突してしまった場合、運転手の方の過失割合が大きくなります。これは適切な運転をしていて事故を回避できなかった状況だったとしても、運転手の過失割合が大きくなることに変わりはありません。

理由として「ドライバーは横断歩道のない道路を渡っている歩行者の通行を妨げてはいけない」という義務があるからです。

横断歩道のない道路に歩行者が急に飛び出して発生した交通事故では、通常20:80という過失割合になります。この20:80を基準として、状況に応じて過失割合を修正していきます。

子供が歩行者のときは若干過失割合が修正される傾向にあります。多くのケースで幼児は10〜20%、児童は5〜10%ほど過失が低く修正されます。そのため、夜間などの見通しの悪い状況でなければ児童は0〜25%、幼児は0〜20%のあいだで過失割合が決まることがほとんどです。

一方で、「幹線道路」や「横断禁止道路」であった場合、歩行者側の過失が5〜10%高くなります。「幹線道路」とは「片側2車線で交通量の多い道路」「歩道と車道の区別がある」「国道や県道」などです。

幹線道路は交通量が多いため、歩行者は横断を一般の道路より注意しなければなりません。運転手からすると歩行者が幹線道路に突然飛び出すことは考えにくいため、歩行者の過失が5〜10%高くなります。

「横断禁止道路」は交通量が多い道路のため、歩行者は横断してはならない道路です。横断禁止道路の場合、歩道橋を渡っていくことが原則のため、幹線道路のときと同じく5〜10%過失が高くなります。

子供の後遺障害認定について

交通事故で負ったケガが治らず「今後は回復の見込みがない」と診断されることを「症状固定」といいます。医師に症状固定と診断されたとき、被害者は「後遺障害」として申請をすることができます。後遺障害は1〜14級に分類され、症状の重さによって等級が上がったり下がったりします。

また、残った症状によって大人と子供で後遺障害の審査基準は少し違いがあるので注意が必要です。これは「大人よりも子供の方が回復力に優れているため、時間が経過すれば影響が少なくなる」という審査基準があるためです。

例えば足を骨折して、すねの骨が変形した場合、後遺障害12級の対象となります。交通事故では成人が骨折で骨に変形がみられた場合、4~12ヶ月の間で症状固定となるのが一般的です。しかし、子供の場合は骨折によって骨が変形したとしても成長期に入るまでのあいだ、変形はどんどん回復していきます。

そのため、子供の骨折の変形はすぐに判断がつきません。そこで子供の場合、治療を終了してから数年間、患部の経過を観察していきます。見た目で変形がわからないくらいまで回復すれば後遺障害の「非該当」となり、数年経過して変形が確認されたときはそこで後遺障害として認定されます。

子供の場合はケガをしても回復力に優れているため短期間のリハビリで回復が見込めるケースも多くあります。こういったことから子供は後遺障害が残りにくいため、子供の障害認定は非常に慎重な審査となります。

交通事故で子供の歯が折れたときの後遺障害について

交通事故の際、子供が顔などに衝撃を受けて歯が折れた場合は問題なく治療費は補償されます。仮に大人の場合であれば、歯が折れたり欠けたりして処置をしたときに後遺障害として認定される可能性があります。

歯に対して処置をすることを歯科補綴(しかほてつ)といいます。交通事故では歯科補綴をした本数によって後遺障害の等級が変わってきます。例えば、3本の歯に処置を加えた場合は後遺障害14級、5本の歯に処置をしたときは13級の後遺障害が認定されます。

しかし、ここで注意しておきたいこととして、後遺障害の審査では歯科補綴の本数は「永久歯」がカウントされるという点です。

もし子供が交通事故で歯が折れるケガを負ったとしても、その歯が「乳歯」である場合は歯科補綴をしたとしても後遺障害の対象にはならないことを知っておきましょう。これは、乳歯はいずれ生え変わるので、乳歯が折れたりしても将来に影響はないと考えられているためです。

子供に過失が発生したときの損害賠償について

子供が交通事故でケガをしたとき、被害者(子供)は加害者から補償を受けます。このとき、被害者である子供に全く過失が無ければ、被害者側(保護者)は治療費などを一切負担する必要はありません。

ただし前述した通り、子供にも一定の過失が発生することもあります。過失割合に応じて被害者側の補償額が変わってきます。例えば、子供が10%、加害者が90%の過失で損害賠償が総額1000万円だったとします。過失が10%であれば1000万円のうち100万円は被害者側(保護者)が負担する必要が出てきます。

このように過失割合によって補償額が増減することを「過失相殺」といいます。補償額が大きくなればなるほど過失割合は重要になります。

 弁護士に依頼することで得られるメリット

以下のように子供が交通事故に遭ったとき、過失割合や慰謝料などでトラブルになることが多いです。補償に関する交渉は全て保険会社が行ってくれるのですが、素人である被害者が保険担当者と交渉するのは圧倒的に不利であるといえます。

例えば、過失割合は信号機の色などを含め、細かく割合が決められています。非常に専門性の高い分野になるため、被害者側だけで保険会社に対抗しても圧倒的不利な状況に陥ることが多いです。納得のいかない過失割合を提示されたときは、交通事故に強い弁護士に依頼をするのが望ましいです。

保険担当者としては、できるだけ被害者への補償額を減らすことが仕事です。そのため、被害者自身で交渉をすると泣き寝入りする可能性が高くなります。

トラブルを最小限に抑えるためには、できるだけ早めに弁護士に依頼することが重要です。弁護士に依頼して「過失割合の交渉」「通院期間の延長交渉」「慰謝料の増額交渉」「後遺障害申請までの流れに対するアドバイス」など、さまざまなサポートを受けられます。

また、弁護士に依頼をすることで「弁護士が被害者の代理人」という形となります。弁護士と契約した時点で保険担当者は、直接被害者と交渉することができなくなります。

子供の保護者からすると、複雑な過失割合や補償の交渉を弁護士に全て任せることができるので、余計なストレスを減らせます。

弁護士費用について

基本的に弁護士費用は高額です。しかし、この弁護士費用を軽減してくれる方法があります。それは、任意保険のプランにある「弁護士費用特約」というものを利用する方法です。

弁護士費用特約に加入していれば、保険会社が弁護士費用を被害者の代わりに300万円まで負担してくれます。仮に被害者自身が加入していなくても、家族が弁護士費用特約に加入していれば使えることが多いです。(※保険会社によって異なります)

適用範囲も広く弁護士費用特約は非常に優れた特約であるため、加入していれば必ず使うべき特約といえます。

もし被害者や家族が弁護士費用特約に未加入であったとしても、問題ありません。「着手金なし」「完全成功報酬」で対応してくれる弁護士事務所があるからです。被害者にリスクのない形で依頼できるため、「慰謝料のほとんどが弁護士費用で消えてしまう」ということがありません。

初回は無料で相談をしてくれる弁護士事務所もあるので、まずは子供の過失割合や予想される補償額について聞いてみるといいでしょう。もし補償に関して不安な点があった場合、トラブルが大きくなる前に弁護士に相談してみることが大切です。