交通事故でケガをしたとき「付添看護費」といって、近親者が入院中などの付き添いで生じた損害が補償されます。

近親者とは家族や親族のことを指し、交通事故の付添看護費では3親等以内の親族が補償の対象となります。

付添看護費の種類として「入院付添費」「通院付添費」「自宅付添費」「将来看護費」の4つに分類されます。ただし、どこまで「看護」になるか明確な基準はありません。そのため基本的には看護する際「滞在時間」や「ケガの重症度」などから、総合的に看護が必要かどうかを判断します。

また「付添看護費が補償されるかどうか」は医師の判断が重要となります。家族や近親者が被害者に付き添って看護したからといって、全てが補償の対象になるわけではありません。

例えば、食事や歩行の介助が必要になるケガであったり、小さい子供であったりすれば、付添看護が認められる傾向にあります。「付添いが必要だ」ということを医師に証明してもらうことで補償される可能性が高くなります。

ここでは、交通事故被害者の家族や近親者がサポートすると発生する付添看護費について解説していきます。

付添看護費の補償額と種類について

付添看護の補償額は算定基準が2つある

付添看護費の計算方法は「自賠責保険基準」と「裁判基準」の2つがあります。

まず一つ目の自賠責保険基準は「最低限度の補償額」とされ、二つ目の裁判基準は「妥当な補償額」とされています。付添看護費は、自賠責保険基準<裁判基準となります。

この裁判基準の「妥当な補償額」というのは過去の判例をもとに、弁護士が保険会社と交渉することで達成される金額となります。そのため弁護士以外の人がいくら判例を提示して、裁判基準の補償額を要求しても認められることはありません。

付き添って看護をした内容が同じであっても、自賠責保険基準よりも裁判基準の方が補償額は高くなります。そのため、付添看護費を請求する場合は弁護士に依頼するほうが正当な金額を要求できるといえます。

交通事故のケガで入院をしたときの付き添い費用

子供が交通事故によるケガで入院してしまった場合は、家族や近親者が病院で付き添い看護をすると「入院付添費」が補償されます。

こちらは原則、12歳以下の場合にのみ認められます。入院中に12歳から13歳になった場合だとしても、それが継続した入院であれば入院付添費が認められます。

こちらも子供の入院に付き添っただけで付添看護費が補償されるわけではなく、基本的に医師から付き添いを指示された場合に限ります。ただし、入院付添費は「お見舞い」程度の内容では補償されることはありませんので注意が必要です。

一方、13歳以上の入院であれば「ケガの程度」などが考慮され、医師が「看護の必要性」を証明した場合のみ付添看護費が認定されます。例えば、被害者が事故の影響で「意識障害があるとき」「手や足などを骨折し、生活が不自由になったとき」などは家族や近親者の付き添いが必要だと判断されます。

交通事故の被害者が入院した際の付添看護費は日額で計算され、自賠責保険基準では4100円・裁判基準では6500円という補償となります。さらに、付き添った家族や近親者の休業損害が大きかった場合は、付添看護費が日額19000円まで増額されることもあります。

親が付添看護をすることで子供が家に取り残されたとき

交通事故で発生する付添看護費は、親や近親者が被害者の子供に付添う以外でも発生します。

例えば、「母子家庭で12歳未満の子供が2人いるとき」などです。仮に長男が交通事故で入院した際「母親は病院で看護をする必要がある」と判断されると、家庭で次男の生活の面倒を見る人がいなくなってしまいます。

このときは母親が長男を病院で看護する費用と、自宅で近親者や家政婦が次男の面倒を見る費用の両方が「付添看護費」として認められます。近親者が仕事を休んで家庭に取り残された子供の生活の面倒を見た場合は休業補償され、これを家政婦に依頼をした場合は実際にかかった費用が補償されます。

交通事故のケガで通院するときの付き添い費用

交通事故でケガをしたとき「通院付添費」という補償もあります。これは被害者が家族や近親者に通院を付き添われることで発生する損害の補償です。

通院付添費が補償される条件として、被害者のケガの度合いや年齢などから総合的に判断されます。基本的に「被害者が一人で通院することができない」という状態が基準になります。例えば被害者が歩行困難になるケガを負っていたり、被害を受けたのが小さな子供だったりするため、どうしても通院に付添いが必要な場合です。

家族や近親者が被害者の通院に付き添った場合、通院看護料は自賠責保険基準で日額2050円、裁判基準で3300円という額の補償になります。こちらも通院に付き添った家族や近親者の休業損害が大きかった場合は、付添看護費が日額19000円まで増額される可能性もあります。

また被害者である子供の保育料や、学校の進級に影響が出る場合の授業料は補償される可能性もあります。

自宅付添費

交通事故によるケガ原因がで、日常生活を自分自身で行えなくなる場合があります。例えば、脊髄を損傷して手足が動かなくなり、寝たきりの状態になってしまったときなどです。

このように被害者が自分だけでは生活できず、被害者の身の回りの世話をする人が必要な場合は「自宅付添費」が補償されます。

家族や近親者が被害者に付き添うことで発生する損害に対しては、基本的に入院付添費と通院付添費の金額を基準に割り出していきます。自宅付添費は日額3000〜6000円が一般的ですが、被害者のケガが重度のものであれば10000円以上になることもあります。

この自宅付添費で気になるのが「いつまで自宅付添費が補償されるのか」という点です。それは「ケガが完治するまで」か、もしくは「医師に症状固定と診断されるまで」の期間が目安となります。

この「症状固定」とは、交通事故によるケガが「今後の回復見込みがない」と医師に診断されることをいいます。基本的に症状固定後は、交通事故の補償は打ち切りとなります。

しかし医師に症状固定と診断され、交通事故の補償が終わったとしても、その後一切の補償がなくなるというわけではありません。将来にわたって被害者の介護が必要である場合は「将来介護費」が補償される可能性があります。

将来介護費

交通事故の被害者を自宅で看護を継続していても、症状が回復せず生涯にわたって被害者を介護していかなくてはならないケースもあります。これを「将来看護費」といいます。

交通事故のケガが「症状固定」と診断されて「今後は回復する見込みがない」という状態になったとき、補償はそこでストップします。しかし、その先も被害者の介護する人が必要な場合、補償なしでは生活が成り立たなくなってしまいます。

そこで、被害者が交通事故後の症状固定を診断されたあとに介護費用が補償されるケースがあります。被害者の後遺障害で等級認定されたものが、将来介護費が補償される条件となります。

例えば「高次脳機能障害」といわれる脳の一部の機能に障害が発生するものや、脊髄損傷などで「寝たきり」状態になるものは、将来介護費が補償される可能性が高くなります。このような症状は、1〜14級ある後遺障害の中で最も重い症状に分類される1級や2級です。

補償内容は後遺障害の程度や介護の負担などを総合的に考えて判断されますが、日額8000円の補償が大体の目安となります。その目安を基準として、被害者の年齢と平均寿命から補償される年数を割り出します。

例えば被害者が40歳男性の場合、平均余命は約40年となります。そのため、将来介護費は40年分を請求する流れとなります。

ここで注意しなくてはならないことがあります。それは日常生活に支障が出るほどの後遺障害が残ったとしても、全ての将来介護費が補償されるわけではないという点です。このような場合は家族や近親者が継続的に付き添って介護しなくてはならないことを、保険会社に対して立証していく必要があります。

弁護士に付添看護費のことで相談するべきタイミング

これまで述べてきたように付添看護費は被害者にとって非常に重要な補償となります。しかし被害者のケガが重症で、家族や近親者の付添看護が必要な場合であっても保険会社がスムーズに補償をしないことが多くあります。

たとえ医師が「付添看護の必要性を判断した」としても、保険担当者が全て補償してくれるとは限りません。

保険担当者というのは「被害者への補償額をできる限り少なくする」ことが仕事です。そのため、本来であれば付添看護費が支払われる案件であったとしても、「補償が認められない」という被害者にとって理不尽な状況に陥ってしまう可能性があるのです。

保険会社はなかなか付添看護費を認めない傾向にあるため、被害者自身で交渉を続けるのは泣き寝入りのリスクが高くなります。

トラブルをできるだけ小さくし、満足する補償額を得るには弁護士の力が必要不可欠です。被害者は、保険担当者に比べて交通事故の補償知識が少ないのは当然です。

そこで、専門知識を有している弁護士のなかでも特に交通事故に強い弁護士に保険担当者と交渉してもらうことで、満足のいく付添看護費を補償してもらえる可能性が高くなります。

このようなことから、医師が「付添看護が必要だ」と判断したタイミングで、弁護士に相談するのがベストだといえます。早めに弁護士に相談をして、「付添看護費が認められる可能性が高いかどうか」をアドバイスしてもらいましょう。

弁護士費用について

一般的に弁護士費用というのは高額になることが多いです。ただし、交通事故の場合は弁護士費用をかけずに依頼できることもあります。それは、被害者の任意保険のプランの中にある「弁護士費用特約」に加入しているときです。

弁護士費用特約とは、保険会社が被害者の代わりに弁護士費用を300万円まで補償してくれるというものです。

被害者本人が加入していなくても、家族が加入していれば使えることが多いです(※保険会社によって異なります)。また、弁護士費用特約を使っても等級は変わらないので、保険料が上がることはありません。

非常に優れた特約となっていますので、弁護士費用特約に加入していればすぐにでも使うべきプランとなっています。

仮に、弁護士費用特約に未加入でも大丈夫です。そのときは「着手金なし」「完全成功報酬」で対応してくれる弁護士事務所に相談すると被害者のリスクはなくなります。

初回の相談は無料で受け付けてくれる弁護士事務所もあるので、「付添看護費が補償される可能性」について聞いてみるといいでしょう。少しでも交通事故の補償に不安があれば、自分だけで悩まずに専門的な知識をもつ弁護士に相談することが重要です。