交通事故でケガを負い、病院や整骨院などの医療機関へ通院が必要になった場合は交通費が補償されます。被害者によって交通手段は電車や車などさまざまで、それぞれの通院方法によって交通費が補償される基準が異なります。
ここでは、交通事故被害者が補償される通院交通費について確認していきます。
もくじ
交通事故で補償される交通費について
交通事故後にどのような通院手段を使ったかによって、補償される交通費が異なります。ひとつずつ詳しくお話していきます。
電車・バスで通院した場合
医療機関へ通院する際に往復でかかった「電車代」「バス代」といった交通費は、全額補償の対象となります。
このとき、電車とバスのどちらか一方だけという制約はなく、双方を利用した場合はどちらも請求可能となっています。例えば、「駅までバスで行き、電車で医療機関の最寄駅まで行く」といったものです。
また、電車賃とバス代を請求する際は「領収書」を保険会社に送る必要がなく、基本的に自己申告で問題ありません。
交通費が認められる目安として、自宅から駅もしくは医療機関までの距離が「徒歩15分以上」であれば問題なく補償されることがほとんどです。
そのため、「歩いて通院できる距離なのにあえて電車やバスを利用する」という場合は、交通費を請求しても拒否される可能性が高いです。
「妥当な範囲」で公共交通機関を利用するように心がけましょう。
自家用車で通院した場合
交通事故でケガをしても、日常生活を送るのに大きな支障が生じない場合があります。この際は、自家用車や代車などで医療機関へ通院した際に発生した「ガソリン代」と「駐車場代(コインパーキング代)」が補償されます。
まず車やバイクを使った場合のガソリン代ですが、自宅から医療機関までの距離をもとに計算されます。ガソリン代は「1キロ15円」が補償の基準値となります。ここでは「レギュラー」や「ハイオク」といったガソリンの種類や車の燃費は関係ありません。
ちなみにガソリン代を請求する際は、領収書は必要ありません。
有料道路の利用に関してはトラブルになりやすいので注意が必要です。「有料道路を使わなくてはならない理由」を保険会社に立証できなければ、基本的に高速道路代などは補償されません。
しかし「この病院でなければ有効な治療ができない」「特殊な治療が必要なために医師に医療機関を指定された」という場合であれば、有料道路代が補償される可能性があります。
有料道路代が補償されるときは別途、領収書が必要になるので保管をしておきましょう。ETCの場合、クレジットカードが発行する「利用明細書」「請求明細書」があれば大丈夫です。
次に有料の駐車場を使用した場合です。こちらは駐車場を利用した際に発行された領収書を全て保険会社に提出する必要があります。
タクシーで通院した場合
交通事故で補償される交通費はタクシー代も含まれます。ただし、すべてのケースでタクシー代が補償されるわけではありません。
基本的にタクシー代は補償されないと考えたほうがいいです。タクシー代が補償されるケースとしては「交通事故で足を骨折した」場合など、「タクシーを使わざるを得ない理由」が明確にあるときに補償の対象となります。
そのため「歩けるけれど、家から病院まで遠い」といった理由で「タクシーを使わなくても通院できる状況」にあるにもかかわらず、あえてタクシーを使った場合、保険会社はタクシー代を支払わないことがほとんどです。
保険担当者によっては「むち打ちで動くのがつらい」「腰が痛くて歩行にも支障が出る」といった、足をケガしていない状況でも交通事故のケガの状況に応じて一定期間はタクシー代を認めてくれるケースもあります。
まず通院でタクシーを使う場合には、先に保険会社に「タクシー代が補償されるかどうか」を相談するとよいでしょう。あとになって「タクシー代が補償されなかった」というトラブルが非常に多いので、被害者の判断だけでタクシーを使わないほうが賢明です。
また、タクシーを使って通院した際の「領収書」は必ず保管しておきましょう。いくら保険会社がタクシーでの通院を認めたからといっても、領収書がなければタクシー代は補償されません。
付添者の交通費について
交通事故でケガをしたとき、被害者に付き添った人も交通費が支払われる可能性があります。
ただし、無条件で交通費が補償されるわけではなく、「付添人が必要な根拠」を保険会社に提示できなくてはなりません。
例えば、交通事故の被害者が「小さい子供」「足をケガしたお年寄り」「精神障害によってコミュニケーションが取れない人」というような場合は、一緒に通院した付添人にも交通費が支払われます。
そのため、事故の被害者当人が一人で通院できるにもかかわらず「心配だから一緒に通院したい」という「付添人の思い」だけでは交通費の補償の対象にはなりません。
もし、被害者の通院に付添い人が必要だと判断したときは、必ず医師に付添人の必要性を証明してもらいましょう。
医師が通院のとき誰かに付添いをするよう指示を出したのであれば、付添人の交通費が支払われる可能性が高くなります。
交通費を請求する用紙の書き方について
交通費を請求する用紙を「通院交通費明細書」といいます。
通院交通費明細書に記載する内容としては「通院期間」「通院区間」「利用交通機関」「往復交通費」「医療機関名」です。
このとき通院した医療機関が病院と整骨院など複数あるときは、それぞれの通院方法を記載します。また、「自宅から駅まではバスで行き、電車で医療機関へ通院する」というときは、バスの区間と電車の区間を分けて記入します。
自家用車の場合は、「通院期間」と「自宅から医療機関までの片道の距離」を記入します。
ちなみにタクシーでの通院に関しては、一回ごとの利用履歴を「通院区間」「料金」「医療機関名」と合わせて記入する必要があります。
交通費を請求する時期について
最後に交通費を請求する時期ですが、基本的に治療が終了したときに一括して請求する流れが一般的です。
ただし、「自宅から医療機関が遠方のため交通費が高額になる」「治療終了まで交通費を自分で立て替えるのは経済的に厳しい」という人は保険担当者に相談してみましょう。
「月毎に交通費を補償して欲しい」という旨を保険担当者に伝えれば、月単位で交通費を補償してくれるはずです。
弁護士に依頼をするタイミング
交通事故ではさまざまな補償があり、どれも複雑で素人には難解です。そのため、交通事故被害者が全ての補償に対して細かく把握し、その補償に応じた対応をするのは困難極まります。
交通事故で補償される交通費は、タクシー代や付添人の交通費は拒否されやすい傾向にあります。保険担当者側の「被害者への補償額を減らしたい」という理由だけで、被害者の正当な主張が拒否されることは珍しくありません。
このような場合は交通事故の知識に優れた弁護士に相談することが望ましいです。弁護士が被害者の代わりに保険会社と交渉をすることで、「必要な交通費が支払われなかった」「付添人が必要であるにも関わらず、付添人の交通費は拒否された」などの理不尽な結果になるリスクが軽減されます。
また弁護士が代理人となることで、交通費や交通手段の交渉だけではなく、トラブルになりやすい「慰謝料の増額」「過失割合の交渉」「後遺障害に対するアドバイス」などもしてもらうことができます。
交通事故で適切な補償を受けるためには弁護士のサポートが必要です。交通事故の被害者になったときは、できるだけ早く弁護士に相談をするようにしましょう。