交通事故トラブルでは最終的には「示談」して終了することが大半です。しかし、被害者と加害者側の主張に折り合いがつかない場合は、調停もしくは裁判で決着をつける流れになります。
そのため、被害者にとって不利な損害賠償になりそうなときは裁判を視野に入れておくことが必要です。裁判は調停を経てからすることもありますし、示談が不成立に終わってからすぐに裁判を起こした方がいい場面もあります。
裁判は事故当事者であれば同乗者を含めて誰でも起こすことができますが、高度な専門知識が必要です。また、裁判前には弁護士依頼などを含めて徹底した準備が重要になってきます。ここでは、交通事故トラブルを解決する最終手段である民事裁判について解説していきます。
もくじ
交通事故における民事裁判
裁判と一言に言っても「刑事裁判」と「民事裁判」に分けられます。交通事故では「死亡事故」など犯罪行為による場合は刑事裁判になり、「損害賠償」など個人や法人のあいだで発生するトラブルは民事裁判になります。
また、裁判を起こす側を「原告」、訴えられる側が「被告」と呼ばれます。原告が受けた損害を主張し、被告がそれに対して反論するという流れを、それぞれ書面や口頭でしていくものです。
原告と被告の主張を聞いた上で裁判官が、和解を提案したり判決を下します。そこでお互いが歩み寄って示談する形になるか、判決によって裁判の勝ち負けが決まる流れになります。
裁判所の種類
「裁判所」と言ってもいくつか種類があります。交通事故では「簡易裁判所」「地方裁判所」「高等裁判所」「最高裁判所」に分けられています。
全国に裁判所はたくさんありますが、原則は「被告の住所地を管轄する裁判所」で裁判を起こすべきだとされています。また、原告の住所地や交通事故が発生した場所を基準に裁判所を選ぶことも可能です。
裁判を起こす際、まずは簡易裁判所や地方裁判所の下級裁判所から始まります。そこで出された判決に納得がいかない場合は控訴や上告をして、上級の裁判所で審理をしてもらうのが一般的な流れです。以下でそれぞれの裁判所の内容を確認していきましょう。
・簡易裁判所
基本的に第一審は地方裁判所で行われます。ただ、訴訟額が140万円以下である場合、まず簡易裁判所に訴状を提出する流れとなります。比較的軽微なトラブルであれば簡易裁判所が管轄です。裁判官は1名で行われます。
・地方裁判所
訴訟額が140万円を超える内容である場合、第一審は原則として地方裁判所が管轄となります。基本的には1名の裁判官で行われますが、3名になることもあります。
・高等裁判所
地方裁判所で出された判決に納得がいかない場合、控訴をして高等裁判所で争う流れとなります。また、高等裁判所が設置されている地域は東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌・高松の全国8箇所です。原則は3名の裁判官で行われますが、5名で行われる場合もあります。
・最高裁判所
高等裁判所で出された判決に納得がいかなかった場合、上告をして最高裁判所で争います。最高裁判所は「終審裁判所」と呼ばれ、最高裁判所で出された判決は「最終決定」になります。
最高裁判所の裁判官は全員で15名になり、裁判官は15名全員で行うか3名以上で行う方法の2種類があります。裁判官全員で行われるのは重大事件であることがほとんどです。
裁判のメリット
裁判で下される判決には強制力があります。そのため、加害者側が被害者に対して歩み寄る姿勢を見せなくても、被害者に有利な判決が下されれば、そこで補償内容が決定します。
判決どおりスムーズに賠償をしてくれれば問題ないですが、「敗訴したにもかかわらず加害者側が損害賠償をしてこなかったらどうしよう」という不安があると思います。基本的に裁判で決定したことは強制執行できるので、加害者の財産の差し押さえることが可能です。
このようなことから、裁判で勝訴すれば適正な賠償額を手にすることができるのが最大のメリットになります。
裁判のデメリット
前述したように、裁判を起こすメリットはありますが、その反面デメリットもいくつかあります。
まず挙げられるのは「手続きが複雑」というものです。裁判を起こすまでに多くの書類が必要ですし、証拠書類等の準備に不備があれば勝訴するのは極めて難しくなります。「調停」や「支払督促」といった制度であれば被害者自身で行うことは可能なことが多いです。
ただ、裁判をして勝訴することを目標にした場合、交通事故の素人である被害者自身で行うのはまず無理だと言えるでしょう。判決には強制力があるため、敗訴した場合は泣き寝入りしてしまいます。
また、裁判を行うにあたってデメリットになるものは「期間」です。相手側の調停では3ヶ月前後で終わることが多いのに対して、裁判では6ヶ月〜2年というように長期になることが多いです。
このようなことから、裁判をするにあたってデメリットもあります。「裁判をしてでも争うメリットがあるのか?」ということを慎重に判断をして、裁判をするかどうかを検討しましょう。
裁判所で掛かる費用
裁判を起こすときの費用は「収入印紙代」「郵便切手代」や、その他いくつかあります。収入印紙と郵便切手の料金は訴訟額によって異なり、細かく定められています。
裁判で勝訴すれば掛かった費用は全て敗訴した側の負担になります。そのため、以下の項目で費用が発生していても、勝訴すればあとで回収できます。
ただ、裁判を起こしても敗訴したり、お互いが歩み寄ることで和解したときは、裁判を起こしたが側が費用を負担することになることを認識しておきましょう。
裁判所へ支払う費用の項目はいくつかあるので、以下で確認していきます。
収入印紙代
収入印紙は「訴状」という裁判を起こすための申し立て書に貼り付けるものです。収入印紙代は損害賠償の金額によって異なります。
・50万円→5000円分の印紙
・100万円→10,000円の印紙
・300万円→20,000万円の印紙
・500万円→30,000の印紙
・1000万円→50,000円の印紙
・3000万円→11万円の印紙
上記の基準に応じて収入印紙を貼り、裁判所へ送ります。郵便局や裁判所の庁舎内で購入しましょう。
郵便切手代
原告と被告がそれぞれ1名の場合は6000円分(内訳:500円×8枚・100円×8枚・82円×10枚・20円×10枚・10円×20枚)の郵便切手を貼り、訴状を裁判所へ郵送します。
また、裁判の当事者が一人増えるごとに切手代2,144円が追加されます(ただし、原告側が複数であっても、共通の弁護士等の代理人がいる場合は追加料金を払う必要ありません)。
簡易裁判の場合は5,625円分(内訳:500円8枚・100円×8枚・82円×5枚・50円×2枚・20円×10枚・2円×10枚・1円×5枚)の切手を貼って簡易裁判所へ郵送します。裁判の当事者が1名増えるごとに切手代2,164円の追加となります。
なぜ、郵便切手が高額になるかと言いますと、裁判所は被告などに対して呼び出し状を含めてさまざまな書類を送達する手続きがあるからです。郵便切手代をあらかじめ納付することを「予納郵券」といいます。最初に予想される郵便切手代の総額をあらかじめ納付するという制度のため、このように高めの金額設定になっています。
郵便切手は細かく内訳料金の額が指定されているので面倒だと思うかもしれませんが、裁判所の庁舎内や郵便局で「予納郵便セット」という形で販売されています。郵便切手代については地方によって若干料金が異なりますので、事前に管轄の裁判所に確認をしましょう。
裁判が終わり、切手が残っていた場合は原告に返却されます。
証人を裁判所へ呼んだ場合
裁判のときには証人を呼ぶこともあります。例えば、過失割合のトラブルで目撃者がいたとき、事故発生状況の証言してもらうときに証人として呼ぶ場合です。
このときは交通費・旅費・日当を証人に対して支払うことになります。日当は8,000円以内になることが多く、交通費は裁判所が相当と認める金額で設定をしていきます。
裁判の流れ
裁判を起こして終結するまでの流れは決まっています。以下で流れを確認していきましょう。
裁判所へ訴状を提出する
交通事故トラブルによって裁判を起こす流れとして、まずやるべきことは「訴状」を裁判所に提出することです。訴状が裁判所に受理された時点で正式に裁判がスタートします。基本的に訴状の書式は決まっており、以下の内容を記載する必要があります。
・当事者の表示
原告と被告の氏名と住所をそれぞれ記載します。「原告」とは「裁判を起こす側の人」になり、「被告」は「訴えられた人」です。
・請求の趣旨・紛争の争点
交通事故の「発生日」「場所」「時間帯」「過失割合の主張」「医師から受けた診断名」を記載します。また、慰謝料や休業損害など、具体的な損害賠償請求額も記載していきます。
・事故発生状況説明図
交通事故の発生状況を文章と図を使って第三者が見てもわかるように記載していきます。このとき、信号機や横断歩道の有無だけでなく「道路幅」「近くの建物」「停止線の有無」など、できるだけ細かく記載していきましょう。
裁判に必要な書類
裁判を行うにあたって必要書類はたくさんあり、以下の書類を集めてから手続きを進めていく流れとなります。もし、弁護士を雇っている場合は必要書類を弁護士に渡して、手続きをやってもらうことが一般的です。
・交通事故証明書
交通事故証明書は警察署や自動車安全運転センター、もしくは郵便局から申請をして取り寄せることが可能です。また、事故当初に交通事故証明書を取得していた場合は、加害者側の保険会社から写しをもらうこともできます。
・実況見分調書
交通事故の発生状況について警察官が現場で立ち合い、当事者同士や目撃者の証言を記載したものが実況見分録書になります。過失割合は実況見分録書の内容を基準に決めていくため、非常に重要な書類です。
・医師の診断書・診療報酬明細書
交通事故の直後から通院した病院から、診断書と診療報酬請求書を取得します。診療報酬請求書には「通院日数・投薬内容・治療内容」や、レントゲンやMRIなどの検査記錄も記載されています。
もし、複数の病院に通院していた場合は全ての病院から診断書と診療報酬明細書を取り寄せなくてはなりません。これらの書類は加害者側の保険会社からも取り寄せることが可能です。
・施術証明書
病院ではなく整骨院(接骨院)で施術を受けていた場合は、施術証明書を取得する必要があります。
・後遺障害診断書・認定票
交通事故によるケガが残った場合、後遺障害申請をすることがあります。このときは医師が作成した「後遺障害診断書」が必要です。もし、後遺障害として認定された場合は「後遺障害認定票」という、具体的な等級と認定理由が記載された書類も必要になります。
・休業損害証明書
交通事故のケガが原因で仕事を休んだり早退をした場合、「休業によってどれだけ損害を受けたか」ということを事業主に証明してもらう書類です。
・源泉徴収票
被害者の収入がどれくらいあるのかを証明するのに源泉徴収票が必要になります。これは適切な休業損害額を決めたり、後遺障害によって「将来の利益がどれだけ失われたか」というものを算出するために必要になるものです。
・その他の領収証等
上記の書類以外にも、証拠となる資料等があれば準備をします。例えば、「陳述書」「答弁書」「ドライブレコーダー」というものです。また、後遺障害の症状説明として醜状障害・変形障害の証拠写真も必要に応じて提出する場合もあります。
口頭弁論について
裁判所に訴状が受理されて必要手続きが完了した場合、いよいよ裁判が始まります。まず、訴状を受理した裁判所は被告に対して訴状の写しと、「口頭弁論期日呼び出し状」「答弁書催告状」というものを送ります。
「答弁書」とは、「被告側の言い分」を記載する書類です。被告は指定された期日までに答弁書を作成し、裁判所へ返送しなくてはなりません。
もし、被告が答弁書を返送せずに裁判を欠席した場合、原告の言い分が全て通り、いわゆる「勝訴」扱いになります。ちなみに、被告が裁判を欠席しても答弁書を出していれば、そこに書かれた内容の主張がされたと扱われます。
訴状が受理されてから約1週間前後に原告へ日程調整の連絡があることが多く、そこで具体的な口頭弁論の期日が決まります。大まかな目安として、訴状が裁判所に受理されてから第一回口頭弁論まで約1〜2ヶ月になることが多いです。
裁判当日は準備しておいた内容を自分もしくは依頼した弁護士が主張をする流れとなります。裁判は時間にすると10分前後になり、意外とすぐに終わってしまうのが実際のところです。
また、弁護士が代理人であれば、被害者自身は裁判に行かなくても問題ありません。
民事裁判の目安期間
裁判は訴状が受理されてから約1ヶ月後に第1回口頭弁論があり、そこで損害賠償の根拠となる証拠書類等を提示します。その後はだいたい月に1度くらいのペースで口頭弁論があり、お互いの主張に対して反論をしたりします。
例えば、後遺障害慰謝料の金額で争っている場合です。まず、被害者側が主張する後遺障害慰謝料の金額が正当であることを裏付ける証拠を提出します。これは被害者を診察してきた医師の意見書などを根拠にすることが多いです。ケガの重症度などを根拠にして、精神的苦痛や収入に損害を受けたことを証明していきます。
それに対し、相手方は被害者に対して反論をし、後遺障害慰謝料の金額を下げるような主張をしてきます。裁判は当事者同士の主張と反論を繰り返し、お互いの意見が出てこなくなるまで繰り返していきます。
また、裁判では慰謝料などの損害賠償に関するものもありますが、過失割合で争うことも多いです。これは、事故状況に関する「実況見分書」「発生状況の詳細」などを基に、被害者側の過失を低くする主張をするのが一般的になります。
当事者双方の主張を十分聞いた裁判官は一度、和解案を提示します。和解を受け入れるとお互いが歩み寄る形になるので、被害者の希望する損害賠償額を下回ることがほとんどです。もし、和解案を受け入れなかった場合は、最後の口頭弁論から2・3ヶ月後に判決が言い渡されます。
このように、お互いの主張と反論を繰り返し、裁判が終わるのは早くても6ヶ月程度です。裁判が長引くと2年前後もしくはそれ以上の期間が必要になることもあります。
損害遅延金とは
加害者側は被害者に対して速やかに損害賠償をしなくてはなりません。しかし、過失割合や慰謝料の金額などで争いがあり裁判をした場合、損害賠償の支払は大幅に遅れることになります。
支払が遅れることによりお金を運用する機会を失うことで、被害者にとって損害が大きくなります。そのため、「損害遅延金」という、損害賠償額に年利5%を上乗せして請求できる被害者にとって重要な制度です。
例えば、裁判で加害者側が被害者に1,000万円の支払いを命じられた場合があるとします。この場合、交通事故から1年が経過していれば50万円、2年経過していれば100万円を損害賠償額に上乗せして支払わなくてはなりません。
損害遅延金の起算点は「交通事故発生日」です。そのため、事故日から損害賠償の支払命令が出た日にちで損害遅延金は計算されます。
判決時の損害賠償額が大きければ大きいほど損害遅延金は重要なものになります。このようなことから、裁判をするにあたって損害遅延金が発生する可能性があることについても頭に入れておきましょう。
また、損害遅延金は「判決」がなされた場合のみ算出可能です。裁判をしても「和解」「示談」などで終結すれば、損害遅延金は発生しません。
判決に不服があった場合
裁判で口頭弁論を繰り返し、提示された和解案に対して当事者の一方が拒否をすれば判決が言い渡されます。判決の内容に納得がいかなかったり、おかしいと感じた場合はさらに裁判を続けることができます。
それは日本では「三審制」という制度になっており、一つの争いに対し3回まで裁判をすることができるからです。第一審に対して不服があれば「控訴」、第二審の判決に不服があれば「上告」をして上級の裁判所で争います。
注意すべきポイントとしては、控訴と上告をするにあたって期限があることです。判決が下されてから2週間以内に控訴や上告の手続きを取らないと、そこで判決が確定してしまいます。
また、交通事故の裁判で控訴できる場合は、第一審の誤りを具体的に主張と立証ができるときだけになります。そのため、上級裁判所で争う姿勢を見せても裁判所が申請を却下する可能性があることも認識しておきましょう。
交通事故裁判の実態
一般的に「裁判」と聞くと、「裁判官が公正に裁いてくれる」という認識があるはずです。ただ、実際は違います。交通事故では過去の裁判例を基準にして判決がなされる場合がほとんどです。
例えば、過失割合でトラブルになり裁判になった場合です。青信号を歩行中に車と衝突した際、「歩行者が赤信号を無視していた」というように明らかに相手が嘘をついていても、動画や目撃者の証言など客観的な証拠・因果関係がない限り、判例で大まかな過失割合がすでに決まっています。
また、慰謝料についても同じようなケガ・治療期間など、判例を基準にして最終的な慰謝料が決まる仕組みになっています。
たとえ「加害者が事故状況についてウソを付いている」「自分のケガは判例よりも重症なケースに当てはまる」と主張しても覆すことは難しいです。基本的に裁判では、よほど明確な根拠がない限り判例重視の結果になると思っていいです。
このようなことから、裁判をする前段階である程度の結果がわかります。そこで裁判をするメリットが大きいと判断することができれば、裁判をするべきです。
ケガの状態で裁判官の態度が変わる
裁判官は全員が誠意ある対応をするとは限りません。また、法廷では厳粛な雰囲気にならず、裁判官が横柄な態度で証人尋問をしてくることもよくあります。
実際、私の知り合いが交通事故で裁判をしたときは、事前に病院などで集めたカルテ・医師の意見書などの資料を一瞬チラッと見ただけで「ただのむち打ちでしょ?そしたら半年も治療は必要ないんじゃない?」と裁判官に言われています。
基本的に裁判官は法律の専門家のため、医学的知識に乏しいです。そのため、重症なケガを扱った裁判でなければ判例通りの判決をすると決めてきて、「手抜き」「流れ作業」のような裁判になることもあるので注意が必要です。
全てがこのような裁判になるのではないですが、「必ず正当に裁いてくれる」とは限らないことを認識しておきましょう。
裁判を検討すべき場合
交通事故被害に遭い、納得のいく補償を受けられる見込みが少なければ裁判を検討すべきです。ただ、交渉が上手くいかないからといってすぐに裁判をするのではなく、トラブルの状況に応じて判断しなくてはなりません。
まず、裁判を起こすにあたっては「相手を訴える根拠」が必要です。具体的には「不当な慰謝料を提示された」「過失割合の争いで加害者と意見が食い違う」というものがあります。
例えば、後遺障害として認定されたときは適切な慰謝料をもらえるように請求します。ただ、基本的に保険会社はまず少ない金額を提示してくることが多いです。
そのため、保険会社が適切な金額を支払う姿勢を見せなかった場合、過去の裁判例を基準にして適正な慰謝料を請求した方がいいでしょう。
この他の例では、治療費や休業損害などの被害を受けているにもかかわらず、加害者が無保険で支払い能力がないことを理由に交渉に応じないなどがあります。
このように、被害者のことを保険の素人だからと不当な補償を提示してきている場合や、交渉に応じてこない加害者であるときは裁判をした方がいいと言えます。
調停で交渉が不調に終わった場合
調停とは裁判所で行う手続きの一つで、法律の専門家をあいだに挟んで話し合うことでトラブルの解決を目指す方法です。これは、「お互いの歩み寄り」によって「和解」することが目的になります。
調停は裁判よりも簡単な手続きですることができ、費用も少なく短期間で終了することが多いので非常に便利な制度です。ただ、調停は裁判と違い強制力がないため、相手が交渉に応じる姿勢を見せなければ納得のいく形で終わることは不可能だと考えていいです。
そのため、調停での交渉が不調に終わった場合は、裁判によってトラブル解決を図る以外に方法はありません。調停で納得のいかない補償内容になったときは裁判を視野に入れて準備を進めましょう。
裁判をする際は弁護士に依頼をすべき
基本的に裁判をするときは弁護士に依頼をするべきです。被害者個人の力で裁判行う「本人訴訟」というものがありますが、正直おすすめできません。
「弁護士費用を節約したい」という気持ちがあると思いますが、被害者の主張が通らなければ結果的に大きな損害が出ます。裁判では「実際に受けた被害」「主張する損害賠償額」など、法律に則って主張しなくてはいけません。裁判を起こすまでの手続きや証拠の主張・立証を含めて、法律の素人である被害者が一人で行うのは困難です。
そこで「裁判の途中で弁護士に依頼すればいい」と考える人がいるかもしれませんが、これも避けた方がいいでしょう。裁判で不利になった状態で弁護士に依頼をしたところで、状況を好転させるのは難しいからです。
もし、弁護士を入れて不利な状況を覆せたとしてもかなりの労力を要するため、通常よりも高額な弁護士費用が掛かることがほとんどになります。そのため、結果的に余計な費用が増える結果となります。
このようなことから、裁判をしようと思った場合は必ず弁護士に依頼をするようにしましょう。ただ、いきなり弁護士に依頼をせず、まずは相談をすることをおすすめします。
そこで、予想の「損害賠償額」「過失割合」や、「実際に掛かる弁護士費用の金額」などを聞いた上で依頼を検討するといいです。