交通事故被害者の担当をする弁護士事務所の中には、被害者のために仕事をきちんとこなす「優良弁護士」から仕事をサボる「怠慢な弁護士」がいます。弁護士選びをきちんとしなければ、仕事をろくにせず報酬だけ持っていかれる弁護士に出会う確率が高くなります。
もし、怠慢な弁護士に依頼してしまうと、保険会社との交渉で被害者の意見をきちんと主張してくれません。怠慢な弁護士は保険会社の言いなりになることも多く、そうなると適切な賠償金を取ることができずに泣き寝入りとなる可能性が高くなります。
そこで、きちんと交通事故被害者のために対応してくれる弁護士事務所を探すといいです。ここでは怠慢な弁護士を見極め、優良な弁護士事務所を選ぶポイントを解説していきます。
もくじ
怠慢な弁護士がいる理由
交通事故での弁護士報酬というのは、事故直後から被害者のサポートをしても、最後の示談間近にサポートをしても弁護士報酬は同じ金額です。弁護士報酬は「相談料」「着手金」「成功報酬」などの合計によって決定します。弁護士が被害者の代理人として活動した期間は関係ないのです。
被害者が医療機関へ通院していれば、自動的に慰謝料は加算されていきます。ただ、被害者の治療が終了して、弁護士が示談交渉をする際は「弁護士基準」というものがあります。これは、弁護士が示談交渉するだけで慰謝料が増額される仕組みです。
例えば、6ヶ月間しっかり高頻度で通院していれば、通常75万円の慰謝料を受け取れるところが、弁護士を通すだけで91万円までアップ(16万円のプラス)します。このように、弁護士があいだに入って交渉するだけで慰謝料が増額するのです。
これは「弁護士基準」といって、過去の裁判例をもとに国が決めた基準になります。要は「弁護士が交渉すれば妥当なラインまで慰謝料を上げてもいい」という制度です。多少金額が前後することはありますが、弁護士に任せればほぼ確実に被害者の慰謝料は増えるのです。
ケガが完全に治り切っていない状態など、被害者が通院期間や慰謝料自体に納得しない終わり方をしても、慰謝料が増額されれば弁護士に報酬が入るのは確定します。簡単にいうと、弁護士にとって交通事故は「おいしい案件」です。
怠慢な弁護士を見極めるポイント
交通事故の治療が終了した時点で、通院日数や期間をもとに慰謝料が確定します。そこから慰謝料の増額をさせるというのは、弁護士にとって難しい仕事ではありません。そのため、被害者を精一杯サポートしなくても弁護士側の報酬は確約されている部分があります。
このとき、被害者のために通院期間の延長交渉や後遺障害認定のためのサポートを懸命にせず、できるだけ仕事量を減らしにかかるのが怠慢弁護士です。
怠慢な弁護士がよく使う言葉
交通事故の被害者が弁護士と契約する前は、まず相談してから依頼するかどうか決めることがほとんどです。そのときに、弁護士がするアドバイスで信頼できるかどうかを判断すべきです。
怠慢弁護士がよく言うフレーズとして、「交通事故の相談を弁護士に依頼していることを保険会社知ったら、保険会社の担当者が警戒して早く治療を打ち切ろうとしてくる。だから、示談近くになったときにこちら(弁護士側)が対応します」というものがあります。
要は、「いま弁護士に依頼したら被害者が不利になるから、最終局面で対応を開始しますよ」というものです。実際は、早めに弁護士に依頼したところで被害者が不利になることはありません。むしろ、弁護士があいだに入ることで通院期間や後遺障害申請などがスムーズにいきやすいです。
なぜ、弁護士が最後の段階まで保険会社と交渉をしようとしないかというと、その理由は非常にシンプルです。簡単にいうと「手抜き」です。前述したように、弁護士を通せば自動的に交通事故の補償額が上がり、弁護士報酬が発生するという仕組みが怠慢を生み出す原因となっているのです。
「同じ報酬額になるなら、できるだけ労力を減らしたい」と考える弁護士は多いです。途中の保険会社との交渉は被害者に任せて、最後の示談交渉だけサクッと終わらせて報酬をもらうのが怠慢な弁護士が取る行動です。
交渉できない理由ばかり並べてくる
例えば、通院中の病院(整形外科)の対応が悪いから転院をしたい意向を弁護士に伝えたとします。本来であればすぐに弁護士が保険会社に連絡入れて、転院できる状況を作らなくてはなりません。
しかし、怠慢な弁護士は「現在通院している病院より遠くなるから難しいです」「◯◯日経過しているから厳しいです」というように、交渉すらしない流れにしようとしてきます。
状況によっては被害者の意向が全て通るわけではありません。ただ、怠慢弁護士はそもそも交渉する気がなく、期間が経過して示談交渉をするだけという状況に持っていきたいと考えています。
交通事故は発生状況やケガの状態で、補償が終了する期間はある程度決まっています。例えば、むち打ち症などは3~6ヶ月というように、どこかで補償に区切りをつけます。交通事故は被害者本人の意思ではなく、症状が残っていても補償の打ち切りは必ずやってきます。
それまで、いかに労力を使わないかを考える弁護士は避けるべきです。
行動が遅い弁護士は要注意
怠慢な弁護士を見極めるポイントとして、他には行動が遅いというものがあります。これは、治療の継続中によくあることですが、なかなか保険会社と交渉をしないのです。
「いま保険会社と交渉中なので」を繰り返し、後日問い合わせても同じ回答が続くケースも気をつけましょう。トラブルが全く進展しないのは保険会社の言いなりになっているか、そもそも交渉すらしていないことが考えられます。
楽をしたい弁護士からすると、保険会社と交渉もせず放置していれば自然と示談交渉が近づいてきます。そこで、「あなたはこれぐらいの治療期間が妥当です」「頑張って交渉をしますが、今の状況では結果は変わらなそうですよ」というように、保険会社相手に交渉するのではなく、被害者を「説得」してきます。
このように、早く示談をさせてトラブル自体を終わりにしようと試みるのです。そのため、怠慢弁護士に依頼すると、仕事をせず報酬だけもっていかれる危険性が高いのです。そのため、交渉して被害者のために何とかしようと、動きもしない弁護士は要注意です。
優良弁護士だと判断する基準
交通事故の知識に優れた弁護士は、被害者の質問に対して具体的に答えます。例えば、「ケガの状況から、後遺障害◯級の可能性があります。認定されれば◯万円慰謝料が増えますので、今後は週に3〜4回は病院を中心に通院してください」というように、いま取るべき行動や今後の見通しを明確に教えてくれます。
また、保険会社との交渉で何か動きがあればマメに被害者へ連絡を入れて、交渉の方針を確認してくれます。要は、優良弁護士であるほど「勝手に弁護士がどんどん話を進めて、事後報告をする」ようなことはありません。
被害者の意向をしっかり確認してから交渉を進める弁護士であれば信頼できます。
弁護士費用の説明について
弁護士に依頼するかどうかは、実際に相談した後に決めます。その際、弁護士費用の説明がわかりやすいかどうかも重要なポイントです。
基本的に弁護士費用というのは「相談料」「着手金」「成功報酬」など、複雑なため非常にわかりにくいです。
被害者自身が「弁護士費用特約」というものに加入していれば、保険会社が弁護士費用を負担します。
しかし、弁護士費用特約に未加入だった場合は、弁護士費用が自己負担になるので注意が必要です。費用の説明をわかりやすくしてくれて、弁護士費用が発生してまで依頼するべき案件かを明確に教えてくれるか確かめるといいです。
そのため、優良な弁護士であれば、被害者の賠償額と弁護士費用の関係で依頼を断わることがあるのです。弁護士費用が発生することによって、被害者の賠償額が本来受け取れた額より少なくなってしまうのが理由です。このように、被害者の賠償額を第一に考えてくれる弁護士であれば、アドバイスを受け入れるべきです。
もし、弁護士費用を払ってでも依頼した方がいいと言ってきたら、具体的に被害者はどれだけメリットがあるかも教えてくれるか確かめましょう。
依頼中の弁護士を変えたいとき
現在、怠慢な弁護士に依頼をしてしまっている場合はすぐに契約を解除して、優良な弁護士に変えるべきです。依頼している弁護士に対して少しでも「頼りない」「何もしない」「対応が悪い」ときは、別の弁護士事務所を探すといいです。
交通事故後の賠償が納得のいかない形で終わってしまえば一生後悔します。病院でいう「セカンドオピニオン」のように、交通事故に強い弁護士を見つけましょう。