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交通事故でケガを負ったとき、医療機関への通院期間や賠償額でトラブルになるケースは多いです。たとえ、被害者が正当な主張をしても保険会社は誠意のない対応をすることがよくあります。

適切な補償を受けたい被害者と、少しでも賠償額を減らしたい保険会社とはスムーズに折り合いがつくことはありません。このとき、保険担当者より交通事故知識に劣る被害者が直接やり取りしても納得のいく結果は得られません。

そこで、交通事故でトラブルが起きたら弁護士に依頼するのが最適です。自分の任意保険のプランに「弁護士費用特約」というものに加入していれば、すぐに使うべき特約です。

これは、自己負担ではなく保険会社負担で弁護士に依頼できる優れた補償内容です。交通事故に強い弁護士が味方になってくれることで、治療期間や賠償額などの不安が大きく軽減されるのは間違いありません。

ここでは交通事故被害に遭ったとき、弁護士に依頼したときのメリットについて解説していきます。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約というのは、300万円までを上限に、保険会社が弁護士費用を補償してくれるという優れたプランです。一人300万円ずつ補償されるので、複数人が被害者になったとしても全員が弁護士費用特約を使えます。

相談料は約10万円で、それにプラスして着手金や成功報酬などが弁護士費用となります。多くのケースは弁護士費用が100万円以下でおさまります。300万円を超える弁護士費用は自己負担となりますが、裁判にもつれたとしても上限を超えることは少ないので、あまり心配しなくても大丈夫な範囲です。

弁護士費用特約は自分が加入している任意保険であっても、等級が変わらずに使うことができます。要は保険料が上がらずに済むということです。そのため、弁護士費用特約を使う場合のリスクはないので、積極的に使うべき特約だといえます。

加入率でいうと3〜4割は弁護士費用特約に加入しているのですが、利用率は約0,05%とかなり低いです。これは、弁護士費用特約に加入しているのに気づかないケースもありますし、弁護士に依頼することに対して敷居が高く感じてしまい断念する人も多いのです。

物損事故で弁護士費用特約を使うとき

物損に関するトラブルでも弁護士費用特約は使えます。よくあるトラブルとしては車の修理代です。修理費用を満額払おうとしない保険会社が多いため、弁護士に修理費用の上積み交渉をしてもらえます。

また、車自体の価値が落ちてしまうことでトラブルになることもあります。例えば、近くに車を売る予定があったときは要注意です。「事故車扱い」となるのため、車の価値が大きく下がってしまうのです。

事故によって、マイナスで数十万円くらい査定が下がるケースがよくあります。このとき、「評価損」といって車の価値が下がった部分に対する補償があります。交渉によって、下がってしまった車の価値の約15%を取り戻すというものです。

基本的に保険会社は評価損を認めない傾向があるので、被害者本人だけで交渉するのは困難です。車の価値が下がった分を取り戻すには、弁護士の力を借りるべきです。必ず戻ってくるわけではありませんが、評価損の交渉をしてもらう価値は十分にあります。

弁護士費用特約の適用範囲

弁護士費用特約に未加入であってもすぐに諦めてはいけません。自分が任意保険に加入していなくても大丈夫なケースが多々あります。弁護士費用特約に未加入の際、確認すべき項目がいくつかあります。

まず、保険契約者の「配偶者」「家族」などが弁護士費用特約が利用できます。ただし、子供が結婚をしてしまっている場合は弁護士費用特約の対象外となります。要は、夫・妻・未婚の子供であれば大丈夫です。

例えば、実家から離れたところで下宿している学生が事故に遭った場合でも、両親のどちらかが弁護士費用特約に加入していれば適用範囲に含まれます。

家族でなくても契約車両に同乗していた人も弁護士費用特約の適用範囲内です。友人が後部座席に搭乗中の事故など、血縁関係がなくても弁護士費用特約に加入している車両であれば補償の対象となります。

例えば、契約車両に乗らず、友人の車やタクシーに乗車中の交通事故でも、自分または家族が弁護士費用特約へ加入していれば適用されることもあります。要は、自分が契約している車に乗っていなかった交通事故でも、自分の車が弁護士費用特約に加入していれば補償の範囲に入ってきます。

また、自分や家族が弁護士費用特約へ加入していなくても確認すべきものがあります。それは、自宅の「火災保険」です。火災保険にも弁護士費用特約があるのですが、もし加入していれば交通事故でも適用できます。

このように、弁護士費用特約とうのは適用範囲がかなり広いです。もし、自動車保険に弁護士費用特約がなかったときは、必ず火災保険もチェックするようにしましょう。

各保険会社によって、微妙の弁護士費用特約の適用範囲が異なるので疑問点があれば、すぐ保険担当者に確認するようにしましょう。

弁護士に依頼するまでの流れ

交通事故で弁護士費用特約に加入していたとき、特約を使うこと自体は簡単です。まず、保険担当者に弁護士費用特約を使用する意向があることを伝えます。その後、依頼したい弁護士が決まったら再度、担当者へ弁護士事務所の詳細を伝えるという流れです。

弁護士に対しては「委任状」を書くだけなので、思ったより少ない手間で契約できます。

また、保険の約款(契約内容)には弁護士費用特約について「保険会社が同意したした場合のみ使える」という記載があります。このような記載があっても、不当な理由で弁護士費用特約を使わせないということはありません。あまり気にしなくても大丈夫なポイントといえます。

弁護士費用特約が使えないケース

ここまで書いた内容では、弁護士費用特約はかなり広範囲で使えますが、中には適用外のケースもいくつかあります。

まず、「過失が100%の加害者」「自爆事故(単独事故)」「加害者が親族」の場合は、弁護士費用特約を使うことができません。そして、「無免許運転」「飲酒運転」などの犯罪行為をした運転手も、弁護士費用特約は適用外となります。

同じ交通事故であったとしても、「自転車と歩行者」では弁護士費用特約は使えないです。自転車や歩行者の場合は、自動車全般(原付を含む)が相手のときが弁護士費用特約が適用される条件になります。

「自転車同士」「自転車と歩行者」の事故で弁護士に依頼したい場合は、「日常事故弁護士費用特約」というものに加入していれば弁護士費用が補償されます。そのため、まずは自分が加入している任意保険の内容を確認しましょう。

弁護士費用特約が使えるか保険会社に確認するべきケース

弁護士費用特約が使えるか微妙なケースもあります。保険会社によってですが、弁護士費用特約が使えないことが多いのは「加害者側の同乗者」です。

例えば、停車中の車に追突してしまったとき、助手席に座っていたなどです。この場合、助手席に座っていた人に過失はないので、身体の治療は問題なく補償の対象となります。

しかし、運転手が弁護士費用特約に加入していても、保険会社の契約内容によっては弁護士費用特約が使えないこともあります。

このように、事故状況によって弁護士費用特約が使えないこともあるので、まずは自分の加入している保険会社に問い合わせてみるといいです。

弁護士にするメリット

弁護士に依頼するメリットとして最も大きい部分は、相手保険会社との交渉を任せられることです。弁護士との契約が完了した時点で、保険担当者は被害者との交渉を弁護士を介して行うことになります。基本的に保険担当者が被害者へ直接交渉できなくなるので、精神的なストレスは激減します。

過失割合が0の被害者の場合、自分側の保険会社は交渉に入れないことになっています。例えば、「停車中に追突被害に遭った」などです。このように、過失oの被害者は自分自身で相手保険会社と交渉をすることになるのです。

保険のプロを相手に交渉するのは非常に不利な状況に陥りやすく、納得のいく形で終われることは少ないです。弁護士に任せた方がスムーズに交渉が進みやすくなるので、弁護士費用特約に加入していれば迷わず使うべきです。

また、示談交渉の際は弁護士が交渉をするだけで慰謝料が増額される仕組みになっています。弁護士があいだに入らなければ、最低限の補償しか受けられません。しかし、弁護士が交渉することで「妥当な範囲まで賠償額を増額させていい」となっています。

そのため、6ヶ月間の治療が終了して慰謝料が75万円のところ、弁護士が交渉すれば最大91万円まで慰謝料が増額されます。後遺障害14級であれば32万円の慰謝料が110万円まで増額され、賠償額に関してもメリットが大きいです。

弁護士に依頼した際のデメリット

交通事故で弁護士費用特約を使った際、デメリットはあります。それは、示談までの期間が長引くこと。弁護士に依頼していないときは、示談が成立するまで数週間程度で済みます。

弁護士に依頼した場合、治療が終了してから弁護士は医療機関から資料を取り寄せます。資料が全て揃ってから保険会社との交渉がスタートします。複数の医療機関が関与しているときは全て資料が揃うのに時間が掛かり、保険会社との交渉開始までに時間が必要になってしまうことが多いのです。

そのため、治療終了から示談が終わるまで数ヶ月が経過してしまうこともあります。もし、「賠償額はどうでもいいから、早くトラブルを終わらせたい」という方は弁護士に依頼しない方が精神的なストレスは少なく済みます。

弁護士事務所を選ぶポイント

多くの人が、日常から弁護士と接することは少ないと思います。そのため、弁護士に依頼することに対して間違った認識を持っていることが非常に多いです。

気さくに柔らかい対応をとってくれる弁護士もたくさんいます。弁護士のイメージが「怖い」「威圧感がありそう」など、被害者にとってプラスにならない固定観念があったらもったいないです。

よくあるケースとして、弁護士に依頼することが「騒ぎを大きくしている」「大袈裟」と勘違いをしていることがあります。実際はこのようなことはなく、むしろ弁護士を入れることでトラブルが小さくなります。

保険会社との交渉をスムーズにしてもらえるように、交通事故に強い弁護士を見極める必要があります。

交通事故の専門知識が豊富な弁護士に依頼する

弁護士と聞くと、法律に関することは全て知っていると思っている人がいますが、これは違います。

医者が内科・皮膚科などというように、専門分野を持つのと同じようなイメージです。弁護士によっては遺産相続に詳しかったり離婚問題に強かったりなど、得意分野がそれぞれ違います。

そのため、交通事故の専門知識が豊富な弁護士に依頼できるかが重要になってきます。交通事故知識がない弁護士に依頼してしまうと、トラブルを解消できずに泣き寝入りのリスクが高くなります。

弁護士を入れるタイミング

交通事故で弁護士に依頼するタイミングは「加害者が証言を変えてきた」「過失割合に納得がいかない」など、いろいろあります。

ただ、弁護士へ依頼するベストなタイミングとしては「事故直後」です。弁護士と契約すると、依頼者は保険会社と直接やり取りをすることがなくなります。そのため、事故後の余計なストレスは激減しますし、補償に関してもスムーズに話が進みやすいです。

事故直後でなくても、信頼できる弁護士が見つかればすぐに依頼すべきです。交通事故の専門知識がない被害者が、保険のプロである担当者と交渉するのは極めて不利になることが多いです。そのため、トラブルが大きくなる前に弁護士に依頼するといいです。

保険会社が紹介する弁護士は選んではいけない理由

弁護士費用特約に加入している場合、実際に弁護士に依頼するときは自分側の保険会社に連絡を入れます。このとき、「◯◯弁護士事務所に依頼したいのですが」と電話を入れるのですが、スムーズに受け付けない担当者もいます。

よくあるパターンとして、「当社の提携する弁護士事務所でなければダメです」と言ってくるケースがあります。実際のところ、保険会社の紹介する弁護士事務所ではならないというルールはありません。基本的には自由に弁護士事務所を選ぶことができます。

このように、弁護士事務所を指定してくるのは理由があります。担当者が勧める弁護士事務所というのは、高確率で保険会社と癒着があります。そのため、保険会社の勧める弁護士では被害者に対して、誠意のない対応をする可能性が高いです。

せっかく弁護士に依頼しても交渉がスムーズにいくことは少ないで、弁護士を探すなら必ず自分で見つけるようにしましょう。

裁判をしない前提で進めるケースが多い

弁護士と聞くとすぐに「裁判」をイメージしてしまうかもしれません。しかし、交通事故では裁判になるケースは1%以下です。弁護士に依頼してもほとんどが裁判せずに終了します。

なぜ、裁判が少ないかといいますと、多くの交通事故トラブルは過去に似た裁判例がいくつもあるからです。

そこで、過去の判例を基準にして、「過去にこのような事例があるから、今回のケースはこれぐらいの補償が妥当ではないか」という流れで弁護士が保険会社と交渉します。

そのため、交通事故では裁判までトラブルがこじれるケースが非常に少ないのです。

弁護士に依頼すると裁判になると勘違いして、弁護士費用特約を使わない人が多いのが実態です。これは非常にもったいないことなので、弁護士に依頼しても裁判沙汰になることが少ないことを知っておくべきです。

依頼している弁護士が頼りないとき

弁護士に依頼をしていて、行動が遅かったり頼りにならなかったりする場合は泣き寝入りの可能性が出てきます。そのため、少しでも弁護士に対して不信感があれば、他の弁護士に変えることも視野に入れましょう。

弁護士費用特約に加入していれば、弁護士を変えて新たに費用が発生したとしても十分に足りることが多いです。弁護士の対応に納得がいかなければ、早めに別の弁護士を探すといいです。

被害者にとって親切な弁護士であれば、初回は無料相談で対応してくれることが多いです。そのときの状況で、弁護士を変えるべきかを聞いてみましょう。トラブルを解決できるかどうかの目安を聞くだけでも参考になるはずです。

保険会社との交渉を渋る弁護士は変えるべき

代理人としてなかなか動いてくれない弁護士では、保険会社と交渉をしてくれないことがあります。できるだけ労力を使わずに期間が経過するのを待ち、示談交渉だけやろうとする弁護士が多いです。

治療期間を適切なものにするために頑張って交渉してくれないのであれば、被害者にとってはデメリットしかありません。ケガが治り切らないまま治療終了になるリスクもありますし、後遺障害による賠償額も獲得できないかもしれないです。

もし、弁護士を変えたいと思ったら、セカンドオピニオンという形で他の弁護士に相談をしてから決めていくのがいいです。

弁護士費用特約に未加入の場合

弁護士費用特約に未加入であっても弁護士に依頼するメリットは大きいです。ただ、ケースによっては賠償額の大部分が、弁護士費用になってしまうこともあるので慎重に考えなくてはなりません。

親切な弁護士に聞けば、弁護士費用が追加で発生しても依頼すべきか、弁護士を変えずにこのまま交渉を進めるべきかアドバイスしてくれます。

交通事故での補償は、早めの対処が重要です。最もやってはいけないことは、依頼中の弁護士に不信感を抱いたままズルズルと時間が経過することです。

後悔しないためにも、交通事故に強い弁護士を見つけるようにしましょう。